空自F-35墜落は人的要因「バーティゴ」か 推定の根拠と経験者に聞くその恐怖

人は空を飛ぶようにできていないがゆえの問題

 もちろんこれは、あくまでも「状況から合理的に考えうる最も可能性が高い原因」であり、2019年6月10日現在、事故の原因の断定にまでは至っていません。F-35はステルス機ですが、訓練時などはレーダー反射板が取り付けられており、また多機能データリンク(MADL)、リンク16と呼ばれる情報共有ネットワークを持っているため、機体がどのような状況であったかは、フライトデータレコーダーがなくともある程度は知ることができます。もしバーティゴであれば、こうした情報からいずれ原因が特定されることになるでしょう。

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2018年にはアメリカ海兵隊のF-35Bが墜落したが、これはB型特有の問題で、また修正されているため、自衛隊F-35A型墜落との因果関係は考えられない(画像:アメリカ海軍)。

 F-35を飛ばすという仕事は、パイロットだけのものではありません。1機の戦闘機を飛ばすには何十人もの人が「この機体は安全に飛ばすことができる」と署名をしたうえで、初めて実施されます。特に、日常の整備を行う航空機整備員は、飛行のたびに必ず署名しています。「F-35が墜落した原因として機械的な故障が考えられない以上、サインした多くの人たちの仕事には問題がなかった」と結論付けられることは、極めて重要となります。

 もちろん人的要因であったからといって、パイロットの名誉が傷つくことはありません。バーティゴとは地上での生存に適した進化を遂げた人間が、空中に進出したために初めて問題となった、人類共通の課題であるからです。2018年には嘉手納基地のアメリカ空軍F-15Cがバーティゴで海上へ墜落(パイロットは脱出)、また航空自衛隊のF-15Jでもバーティゴでの墜落事故が発生しています。

 残念ながら人類が現在までに得た知見やテクノロジーでは、このバーティゴを克服できるには至っていません。

【了】

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コメント

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1件のコメント

  1. 計器を見ればどの向きに飛んでいるかわかるだろ
    海面に近づけば警告音くらい鳴るだろう
    この件といいF-15DJの墜落といい
    問題は射出座席が機能せず登場者を守らなかったことだ
    関心をそらすような見え透いたごまかしで真実を隠すんじゃない
    いわゆるフライトレコーダーの回収すらされてないのに
    答えがわかるはずがない
    記事は推定推察に過ぎない
    最も深刻であろう撃墜という事象から目を背けるな