三菱重工、買収の思惑 ボンバルディア小型ジェット機「CRJ」事業 「MRJ」改称も関係か

ボンバルディアはカナダの、航空機や鉄道車両の生産など重工業を柱とする企業ですが、その小型航空機部門を三菱重工業が買収しました。MRJの呼称変更も無関係ではないと見られます。これら一連の流れとその背景を追いました。

業界激震! 三菱がボンバルディア小型機事業を買収

 2019年6月25日(火)、三菱重工業はカナダの重工業メーカーであるボンバルディアとのあいだで、同社航空機部門のボンバルディア・エアロスペースが製造しているリージョナルジェット機「CRJ」事業の譲渡契約を締結したと発表しました。「リージョナルジェット」とは、座席数が50席から100席程度の、比較的短距離の地域間輸送航路に適した小型ジェット旅客機のことで、「リージョナル」には「地域の」といった意味があります。

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2019年6月の「パリ国際航空宇宙ショー」で展示された「スペースジェット M90」(竹内 修撮影)。

 また三菱重工業の子会社である三菱航空機は6月13日(木)に、同社が開発を進めているリージョナルジェット機「MRJ」(Mitsubishi Regional Jet)を「スペースジェット」に改称すると発表。さらに6月17日(月)には、フランス、パリ郊外で開催された「パリ国際航空宇宙ショー」の会場で、スペースジェットの新仕様「スペースジェット M100」の開発構想も発表しました。これら一連の動きは、三菱重工業と三菱航空機が旅客機ビジネスの主戦場と位置づけている、北米市場で勝負をかけるという強い意志を示したものだと筆者(竹内 修:軍事ジャーナリスト)は考えています。

 ボンバルディア・エアロスペースは1986(昭和61)年に、カナダの国営航空機メーカー、カナディアを前身とし設立された企業です。同社はカナディアが開発していた「カナディア・リージョナルジェット」を「CRJ」として商品化、1800機以上が生産されるベストセラー機へと育て上げました。

 また1992(平成6)年にはデ・ハビランドカナダを買収して、日本エアコミューターなどに採用されたベストセラーターボプロップ旅客機DHC-8(1996〈平成8〉年以降は「Qシリーズ」に改称)を商品ラインナップに加えたことで、一時はブラジルのエンブラエルと共に、ボーイングとエアバスに次ぐ世界第3位の旅客機メーカーの座を争っていました。

 しかし社運を賭けて開発した単通路型旅客機「Cシリーズ」の開発の遅れと販売の不振から、近年では経営状況が悪化、親会社のボンバルディアは比較的好調なビジネスジェット部門に特化する方針を定め、小型ターボプロップ機DHC-6などの事業をバイキング・エア(カナダ)へ、Cシリーズ事業をエアバスへ、Qシリーズ事業をロングビュー・アビエーション(カナダ)へそれぞれ売却していました。そして、ボンバルディア・エアロスペースに残されていた最後の主要部門であるCRJシリーズ事業の譲渡先となったのが、三菱重工業というわけです。

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1件のコメント

  1. 全然激震ではないだろ