幻の東京五輪と豪華貨客船NYK三姉妹の憂鬱 新田丸、八幡丸、春日丸が臨んだ太平洋戦争
1940年の「東京オリンピック」に向け、日本郵船は豪華貨客船を建造します。擬人化ポスターも残る「NYK三姉妹」の誕生です。しかし時代は戦争へ。3隻の豪華貨客船もまた、そうした時代の奔流に押し流されていく運命にありました。
五輪見据えインバウンド需要狙う貨客船の誕生
2020年には「東京オリンピック・パラリンピック」が開催されますが、1940(昭和15)年9月の「第12回オリンピック大会」も、東京で開催されることになっていました。
2019年現在の東京は世界中からの選手団、観光客を受入れる体制づくりに大わらわですが、そのあたりは1940年大会を控えていたころも同じでした。当時、旅客輸送も手掛けていた海運会社の日本郵船は、外国人客の増大を見越して欧州航路の輸送能力を増強しようと、快速貨客船の新造を計画します。こうして設計されたのが新田丸級貨客船「新田丸」「八幡丸」「春日丸」の三姉妹です。船名は日本郵船の英称である「Nippon Yusen Kaisha」の頭文字、NYKを配したものにもなっています。
ネーミングからも日本郵船の期待度が分かりますが、この船には別の顔もありました。「優秀船舶建造助成施設」制度によって、建造費の3分の1について政府からの助成を受ける代わりに、戦時には空母に改装して海軍に徴傭されることを前提に設計されたのです。
そうした出自の船ですが、他方で豪華客船としての誇りも持っています。一等客室はすべて海に面した外側に配置され、外航客船としては世界で初めて、一等客室と一等、二等公室に冷暖房装置が取り付けられました。二等、三等室のグレードも2万トン以下の客船としては最上のものと評されたレベルの船だったのです。
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