旧日本陸軍「自転車で電撃戦」マレー半島を駆けた銀輪部隊とは 放置自転車問題も発生

「電撃戦」とはWW2期のドイツが戦車と自動車などを駆使し展開したスピード重視の軍隊運用思想ですが、実は当時、日本もそれに似たことをマレー半島で実行していました。戦車も使いましたが、歩兵が駆ったのは「銀輪」こと自転車です。

マレー半島ひたすら南下 シンガポールへ走れ走れ!

 太平洋戦争開戦時のフィリピンやマレー半島攻略戦では、守備するイギリス軍が橋梁や道路を破壊する前に進撃するためのスピードが重視されました。その一端を担ったのが「銀輪部隊」です。

 この作戦に参加したのは、もともと中国戦線に配置されていた第五、十八師団でした。南方転用に備えて歩兵部隊の自動車化が図られますが、トラックの数は足りません。そこでトラックに乗り切れない将兵は、自転車に乗ることにしたのです。正式に「第○○自転車化部隊」というのが編成されたわけではありません。何台の自転車が持ち込まれたのかはっきりとはわかりませんが、現地では日本から輸出されていたものも含む、相当数の自転車が徴発され、1個師団に数千台が配置されました。

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橋を落とされても自転車を抱え渡河。軽便さは銀輪部隊の武器(画像:国立国会図書館蔵 読売新聞社出版部編『大東亜戦争報道写真録:大詔渙発一周年記念』読売新聞社)。

 馬や自動車と違い自転車なら、誰でも短期間の訓練で比較的簡単に乗りこなせ、スピードは徒歩とは比べ物にならず、橋を落とされると自動車は立ち往生ですが、銀輪部隊は修復を待たず担いで渡河し、前進を続けることができました。

 しかし良いことばかりではありません。ゴム製タイヤはとがった石が散らばる悪路や敵の障害物で、とにかくよくパンクしました。1台が1日に2、3回もパンクするありさまです。各中隊に専門の自転車修理班がいましたが、手が回らないほどだったと言います。ただ現地はゴム樹林が多かったため、ゴム糊が入手容易だったのが救いでした。2019年現在、日本国内の道路事情は非常に良好で自転車やクルマがパンクに悩まされることはほとんどありませんが、海外に派遣された自衛隊の装輪車が、とにかく頻繁にパンクして整備班を泣かせるという話とダブります。

 パンク修理が間に合わないときはゴムタイヤを外して、鉄輪だけで無理やり前進することもありましたが、舗装道路を走るとこの鉄輪自転車が戦車の履帯(いわゆるキャタピラ)の音にも聞こえたそうです。ある部隊が夜襲の際、わざとタイヤを外した自転車数台と共に前進したところ、敵が戦車来襲と勘違いして撤退したというエピソードが当時の戦記で紹介されています。自転車が戦車のふりをしたのです。

【写真】実は軍事機密! WW2期日本陸軍による戦車の渡河

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