東京の鉄道風景 半世紀でこれだけ変わっていた 50周年の寅さん映画で定点観測してみた

窓から顔と手を出す、ホームの木製長イス…当時だからこそ

 寅さん映画には毎回マドンナが登場します。1972(昭和47)年の第9作『柴又慕情』では、寅さんが柴又駅のホームでマドンナ役の歌子(吉永小百合)を見送ります。ドアが閉まり走り出した電車の窓から、歌子が当たり前のように顔と手を出して手を振っていました。いまの感覚では危ないなとハラハラします。車両に冷房はなく、多くの窓が開け放たれています。京成金町線の完全冷房化は、ほかの東京の私鉄路線と比べると遅く、1990(平成2)年ころでした。

 1971(昭和46)年の第6作『純情篇』の柴又駅では、旅に出る寅さんと見送りのさくらがホームのベンチに座って話をしています。現在のようにプラスチック製ベンチではなく木製の長イスです。その前に、人の腰の高さほどある灰皿スタンドが置いてあったり、ベンチの背後の壁には立石金竜座というピンク映画館の生々しいタイトルのポスターが貼られていたりするのも、時代を感じさせます。

 柴又駅へやって来る京成の車両も運行系統も変遷します。第1作は車体上部がアイボリー(象牙色)、下部が赤に塗られ「赤電」として親しまれた3200形電車。先頭には押上行きと表示されています。しかし金町線は2010(平成22)年に京成高砂駅が行き止まり式の高架駅となったため、現在はすべて京成高砂~京成金町間の折り返し運転です。

【写真】構内踏切が残る柴又駅

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