2019年の鉄道 注目したい「計画運休の定着」 流行語にも選出 変化した災害時の意識

事前の避難「計画運休」のため進まず 荒川氾濫が迫るなか

 しかし、台風19号は大きな爪痕を残しました。台風の進行方向に向かって発達した雨雲が、各地に記録的豪雨をもたらし、埼玉県と東京都を流れる荒川や長野県の千曲川、宮城県と福島県を流れる阿武隈川などの堤防が決壊。東京都と神奈川県を流れる多摩川でも、水が堤防を越えてあふれ出す越水が発生したのです。

 鉄道の被害も甚大でした。計画運休が功を奏し人的な被害はなかったものの、JR両毛線、八高線、水郡線などの橋梁や路盤が流出。橋梁が土砂崩れに巻き込まれた箱根登山鉄道や、橋梁が橋台ごと崩壊した上田電鉄では、運転再開まで1年以上を要すると見込まれています。またJR東日本は、千曲川の堤防決壊により長野新幹線車両センターが浸水し、最新型のE7・W7系電車合計10編成が水没してうち8編成が廃車になるなど、500億円近い損害を被りました。

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浸水する前の北陸新幹線長野新幹線車両センターの様子(画像:写真AC)。

 スムーズに行われたかのように見える計画運休でも課題が浮き彫りになりました。荒川や関東北部から太平洋に注ぐ利根川は13日未明に氾濫危険水位を超え、一部地域に避難指示や避難勧告が出されるなど、首都圏も水没の一歩手前の危機を迎えました。ところが江東区・江戸川区など大規模な浸水が想定されるエリアでは、本来であれば台風直撃前の広域避難が望ましいとされていましたが、前日の昼から計画運休が始まっていたため、避難が進んでいなかったのです。

 地球温暖化などの影響により、今後も勢力の強い台風の発生が懸念されています。今回、都内では河川の堤防決壊は発生しませんでしたが、行政と鉄道会社にとっては今後、混乱を防ぐための計画運休と、人命を守るための広域避難、そして設備を守るための車両疎開を、それぞれどのタイミングで行うべきかが、大きな課題になりそうです。

【了】

【路線図】運休で真っ赤に染まる京阪神のJR全線

Writer: 枝久保達也(鉄道ライター・都市交通史研究家)

1982年、埼玉県生まれ。東京地下鉄(東京メトロ)で広報、マーケティング・リサーチ業務などを担当し、2017年に退職。鉄道ジャーナリストとして執筆活動とメディア対応を行う傍ら、都市交通史研究家として首都圏を中心とした鉄道史を研究する。著書『戦時下の地下鉄 新橋駅幻のホームと帝都高速度交通営団』(2021年 青弓社)で第47回交通図書賞歴史部門受賞。Twitter:@semakixxx

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