「夜間戦闘機」はなぜ「夜間」なのか? 日中の活動は苦手な「夜行性飛行機」
レーダーの小型高性能化が夜間戦闘機に引導を渡した
当初は、既存の複座戦闘機や、中型爆撃機を流用して夜間戦闘機が作られていましたが、第2次世界大戦の半ばには、戦訓を反映して最初から夜間戦闘機として開発された専用機が登場するようになりました。たとえばドイツではHe219が、そしてなかでも代表的なものとして、アメリカのP-61「ブラックウィドウ」が挙げられます。
P-61は、「バトルオブブリテン」を戦訓に、アメリカがドイツ空軍の夜間爆撃に対抗できる高性能な夜間戦闘機を求めて開発した機体で、最初からレーダー搭載を前提に設計されていました。乗員は3名で、空冷星形エンジン2発、全長15m以上で重量は約10tと鈍重なため、格闘性能は単発単座機にかないませんでしたが、火力は強力で、機体上部中央に12.7mm重機関銃4門搭載の全周旋回銃座を装備し、機体前方下部には20mm機関砲を4門装備していました。
このように世界的に夜間爆撃が多用された第2次世界大戦で、夜間戦闘機は多数開発され、確固たる1ジャンルを開拓すると、ジェット戦闘機が本格的に普及した第2次世界大戦後もしばらくのあいだ、夜間戦闘機の開発は続きました。
しかし、レーダーの小型自動化が進み、単座のジェット戦闘機にも搭載できるようになると、夜間戦闘機の必要性がなくなります。単座のジェット戦闘機が、レーダー搭載によって昼夜問わず、さらに悪天候化でも戦闘可能な能力を手に入れたことで、昼間や夜間といった区分で戦闘機を使い分ける必要がなくなったため、「夜間戦闘機」というジャンルそのものが消滅しました。
その後、「全天候戦闘機」という呼び方も登場しましたが、現代ではレーダー非装備の戦闘機そのものがごく少数になっており、その呼び方すら聞くことは少なくなりつつあります。
【了】
Writer: 柘植優介(乗りものライター)
子供のころから乗り物全般が好きで、車やバイクはもちろんのこと、鉄道や船、飛行機、はたまたロケットにいたるまですべてを愛す。とうぜんミリタリーも大好き。一時は自転車やランニングシューズにもはまっていた。
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