昭和の鉄道旅を支えた「列車用冷水器と紙コップ」の秘密 新幹線や寝台特急などに搭載

新幹線や寝台特急など、かつてデッキ周辺に冷水器を設置していた列車がありました。ボタンを押すと冷たい飲料水が出るというシンプルな機械でしたが、そこには列車ならではの工夫が。いまはペットボトル飲料などの普及で、ほとんど見られません。

新幹線開業を契機に改良された冷水器の紙コップ 手作りから機械化へ

 丸ノ内紙工は1952(昭和27)年創業。紙を素材とした製品を扱う会社で、創業者が元国鉄職員だったことから、国鉄にペーパータオルやシートペーパーなどを納めていました。紙コップも早い段階から納入していましたが、最初のうちは需要が少なく、ほとんど手作業で作っていたそうです。転機となったのは、東海道新幹線の開業でした。

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リニア・鉄道館に収蔵されている0系新幹線車内の冷水機(2011年、恵 知仁撮影)。

「新幹線は当時12両編成で、1両おきの6か所に冷水器が設置されていました。国鉄から、これに紙コップを供給できるかと問い合わせを受けたのですが、それまでの手内職ではとても間に合いません。そこで、製造を機械化することになったのです」

 そう語るのは、丸ノ内紙工前社長の荻野 壽(おぎのひさし)さんです。1928(昭和3)年生まれの91歳、1954(昭和29)年に丸ノ内紙工へ入社し、東海道新幹線開業直前に亡くなった先代の後を継いで、二代目社長に就任しました。

「封筒型紙コップは、郵便の封筒と基本的な構造は同じで、大正時代から変わっていません。ただ、封筒よりも厚い紙を使うため、同じ糊を使うとはがれるという問題がありました。しかし、濃い糊を使うと大量生産できないうえに防腐剤が必要になり、飲用に適しません。また、製造過程で出る紙のロスをいかに減らしてコストを削減するかという点にも知恵を注ぎました」(丸ノ内紙工 前社長 荻野 壽さん)

 荻野さんが新たに考案した紙コップは、紙に全く無駄の出ないものでした。横150mm、縦194mmの紙を内側に折って、上下をラミネート加工して閉じ、ローラーの熱板を通して中央の重なった1cm部分を貼り合わせます。そうしてできた紙筒を束ねて、中央を曲線の刃で裁断すると、封筒式紙コップができあがります。この作り方なら紙のロスがまったく出ず、手を触れずに製造できるので衛生的にも優れていました。

【写真】懐かしい寝台特急「富士・はやぶさ」の冷水器

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