昭和の鉄道旅を支えた「列車用冷水器と紙コップ」の秘密 新幹線や寝台特急などに搭載

新幹線や寝台特急など、かつてデッキ周辺に冷水器を設置していた列車がありました。ボタンを押すと冷たい飲料水が出るというシンプルな機械でしたが、そこには列車ならではの工夫が。いまはペットボトル飲料などの普及で、ほとんど見られません。

寝台特急とともに消えた冷水器と封筒型紙コップ いまは別の場所で活用

「できあがったものを国鉄に持って行くと、すぐに規格化してくれました。その後は在来線の特急にも供給し、最盛期には月間500万枚以上を納品していました。飲用のほかにも、車掌が車内精算用の小銭を入れてメモをしておくなど、さまざまな使われ方をしたようです」(丸ノ内紙工 前社長 荻野 壽さん)

 しかし、平成に入ってJRの時代になると、ペットボトル入りのミネラルウォーターが広く一般に浸透したこともあり、冷水器は徐々に使われなくなっていきました。

「東海道新幹線には、1992(平成4)年に300系『のぞみ』が登場した頃まで供給していたと思います。ところが、衛生検査をしたところ、新幹線の車両基地で供給する水は飲用に適さないという結果が出たため、取りやめることになったそうです。新幹線以外では、寝台特急などを対象に2015年頃まで供給を続けていました」(丸ノ内紙工 前社長 荻野 壽さん)

 寝台特急の終焉とともに姿を消した列車の冷水器と封筒型紙コップ。列車以外では、現在でもさまざまな場所で活用されています。

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国鉄向け封筒型紙コップを開発した荻野壽さん。若い頃は米軍で働き、アメリカの衛生概念などを学んだ(2020年2月、栗原 景撮影)。

 荻野さんは「封筒型紙コップは、いまでも沼津の工場で生産しております。かさばらず衛生的に優れるという特性から、食品工場や医療施設、絵の具のメーカーなどさまざまな場所で使われています。日常的にお薬を飲まれる方にも重宝されていますし、大宮駅にある鉄道グッズのお店でも取り扱っていただいています」と話します。

 冷水器も、殺菌、衛生能力を高めた最新型が、公共施設や医療、介護施設など多くの場所でいまも使われています。列車からは引退しましたが、冷水器、封筒型紙コップとも、これからも多くの場所でお世話になることでしょう。

【了】

【写真】懐かしい寝台特急「富士・はやぶさ」の冷水器

Writer:

1971年、東京生まれ。旅と鉄道、韓国を主なテーマとするフォトライター。小学生の頃から各地の鉄道を一人で乗り歩き、国鉄時代を直接知る最後の世代。出版社勤務を経て2001年からフリー。多くの雑誌や書籍、ウェブに記事と写真を寄稿している。主な著書に『東海道新幹線の車窓は、こんなに面白い!』(東洋経済新報社)、『テツ語辞典』(誠文堂新光社/共著)など。

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