かつての経済対策「高速道路休日1000円」結局どうだったのか? その効果と懸念

毎週末が「GW並みの渋滞」に

 しかし、この「休日1000円」が実施されたことにより、高速道路では毎週末のようにゴールデンウイーク並み、あるいはそれ以上の渋滞が発生したとのこと。2009(平成21)年度における東名高速の渋滞時間は、休日の平均で前年度の約2.6倍、名神高速では約3.5倍に急増したそうです。

 それだけでなく、自家用車の利用が急増したことで、公共交通機関は鉄道、高速バス、フェリーと、軒並み利用者数が減少しました。高速バスでは、2009(平成21)年度の休日における利用者数が前年度の92%に、フェリーでは81%にまで落ち込んでいます。本州と四国を結ぶ本四高速3路線も「休日1000円」の対象だったこともあり、瀬戸内海のフェリーを中心に、航路の廃止や減便が相次ぎました。

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四国~本州・九州を結ぶフェリーは、「高速道路休日1000」の前後4年間で廃止や減便が相次いだ(画像:四国運輸局)。

 高速道路のあるべき料金制度を検討した公益財団法人 高速道路調査会の委員会は、2018年に発表した「高速道路の料金制度に関する研究」の最終報告書で、この「休日1000円」を「高速道路を無料化した状態に近い運用」として、「社会全体として好ましくない状態になる」「高速道路が無料となることは、必ずしも私たちの生活にプラスになることばかりではない」と評価しています。

 というのも、渋滞の激化により、高速道路が提供するサービスである速達性と定時性が損なわれ、たとえば高速バスの定時運行ができなくなったり、物流の定時性が阻害され、流通段階におけるコストが増加したりする、というわけです。

 そのうえで、同報告書は高速道路の料金制度について、「通行料金を支払うことにより、一般の道路と比較して、より速く、より時間に正確に移動できるという選択肢を残しておく必要がある」とまとめています。

【了】

グラフ等で見る「高速道路休日1000円」の光と影

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コメント

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5件のコメント

  1. この時期から主となる国道バイパスが完成してたから国道のほうが走りやすかったな
    函館からフェリーで青森に降りて7号、8号、9号で日本海側を下関まで走ったけど苦にならなかったな、特に新潟から金沢の8号バイパスとか鳥取の9号バイパスは走りやすかったな。
    ETCは契約したけど時間をお金で買えない休日の1000円高速は一度も利用しなかったな

  2. 市内を迂回するバイパスも無料になり、市内を通過する車が減って市内線のバスが定時に走りずいぶん助かったんですが…

    記事にするならそういう面も拾って欲しいです。

  3. フェリーや高速バス事業者の減収補償をどの程度きちんと行ったのか、そこら辺の取材をもっと充実させてほしかった

  4. >公共交通機関は鉄道、高速バス、フェリーと、軒並み利用者数が減少
    高速道路が安いから客を奪われたと文句を言う前に、割引するなり経営努力をしなよ
    とくに、新幹線で毎年何千億も利益を出してるJRが文句言うのがわからないね
    今までが、日本の高速料金の高さに甘えてただけだろうに

  5. そもそも休日だけ期間限定で1000円にするからみんなそこで移動しようしただけで、恒久的に土日平日1000円にすればバラけて渋滞も緩和するんじゃないの。
    それに高速を使うか他の交通機関を使うかは国民が選択すること。
    自分達の利益が減るなんて理由でクレームを言う前に国民に選んでもらえるサービスにすればいいだけ。