地下鉄はなぜ公営ばかり? 民営との事業展開の違いや整備上のメリット デメリット

公営だからできること 市民のチェックも不可欠

 1900年代から1960年代まで、都市の代表的な交通機関といえば路面電車でした。しかし都市の範囲が拡大するにつれて、路面電車では輸送力、輸送速度ともに不足してきます。

 そこで必要とされたのが地下鉄ですが、儲かる路線だけ地下鉄建設をしていては都市の均衡ある発展は不可能です。地下鉄整備は、一企業の利益のためではなく、公の利益のため、都市の発展のために不可欠な交通機関という観点から、都や市が費用を負担し、地下鉄建設を進めるという考え方が主流になっていきました。

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福岡市地下鉄の2000系電車(草町義和撮影)。

 また、都や市が地下鉄建設を行うということは、地下鉄を導入する空間である道路の整備や、ビジネスセンターや住宅地の開発など、都市開発と直接連動した地下鉄整備が可能になるという大きなメリットもあります。

 一方、公営鉄道にはデメリットもあります。民営企業は増収努力とコスト削減が企業存亡に直結するため、細かい単価や金利まで気を配らなければなりません。しかし、短期的な利益追求を目的としない公営鉄道はそのようなインセンティブに乏しく、建設費や経費が私鉄よりも割高になったり、サービス向上の取り組みが遅れたりしがちです。また利益を重視しないという姿勢が、収益性を無視した計画の推進につながることもあります。

 最悪の場合、甘い見通しのもと、到底資金を回収できない路線を建設し、市民にツケだけを残すことにもなりかねません。そうならないようにするためには市民がチェックをして、適正な支出、適正なサービスを行っているかをしっかりと監視していかなければなりません。

【了】

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Writer: 枝久保達也(鉄道ライター・都市交通史研究家)

1982年、埼玉県生まれ。東京地下鉄(東京メトロ)で広報、マーケティング・リサーチ業務などを担当し、2017年に退職。鉄道ジャーナリストとして執筆活動とメディア対応を行う傍ら、都市交通史研究家として首都圏を中心とした鉄道史を研究する。著書『戦時下の地下鉄 新橋駅幻のホームと帝都高速度交通営団』(2021年 青弓社)で第47回交通図書賞歴史部門受賞。Twitter:@semakixxx

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