「北海道の羽田空港」というには特殊すぎる!? 札幌に近い丘珠空港の日本唯一づくめ

空港の除雪はさながら「雪まつり」

 なぜ唯一、丘珠空港だけが陸上自衛隊の手で管制業務を実施しているのでしょう。それは丘珠空港の歴史が深く関係しています。ここは1954(昭和29)年に陸上自衛隊の飛行場として開設され、後の1961(昭和36)年に共用空港となったからです。

 要は太平洋戦争後、陸上自衛隊の駐屯地として使われ始め、のちに民間の定期便が就航、そして現在に至るまで海上自衛隊や航空自衛隊、在日米軍などの部隊展開もなかったことから、今日まで陸上自衛隊が一貫して管制業務を実施しているといえるでしょう。

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HAC(北海道エアシステム)のサーブ340が停まる丘珠空港。右奥に見えるのは、札幌市民にはお馴染みの札幌コミュニティドーム「つどーむ」(松永直也撮影)。

 なお、前述したように丘珠空港は民間定期便だけでなく、陸上自衛隊、警察、消防なども利用し、小型機からヘリコプター、モーターグライダーなど飛来する機種も様々。さらにドクターヘリなど緊急の任務を帯びて離発着を行う機も存在するため、異なる速度域の航空機をさばかねばならないとのことです。

 このため、滑走路に着陸するまでに管制官が効率よく整列させて着陸させるのですが、ほかの空港のように、同じ速度域の航空機の飛行間隔を調整させるのとは勝手が違います。速度がまるで違う様々な機体を上空で整列させるのは少し難しいとのこと。

 また、ほぼ自衛隊が管制する飛行場特有のものとして、レーダー進入という進入方法があります。管制官がレーダー画面の情報をもとに、降下する航空機に対して針路や降下経路のズレといった情報提供と修正指示を、無線を使いリアルタイムで行うものです。冬季の吹雪などの強風や視程障害の際には、管制官の腕の見せ所となっています。

 丘珠空港は日本海側、石狩湾にほど近い場所にあるため、新千歳空港よりも降雪量が多く、吹雪くこともあるといいます。そのため、毎年冬になると空港業務の一環として除雪隊を期間限定で編成するのですが、民間空港や海上・航空自衛隊の航空基地と違うのが、近隣の駐屯地の施設科(いわゆる工兵部隊)から隊員を集め編成する点です。まるで「さっぽろ雪まつり」のようですが、ほかの駐屯地から応援を呼べるのは、北海道の陸上自衛隊ならではといえるのかもしれません。

【了】

【写真】服装も特殊すぎる丘珠空港管制員 そりゃ陸自ですから…

Writer: 斎藤大乗(元自衛官ライター/僧侶)

木更津駐屯地で5年間ヘリコプターと共に暮らした元自衛官。自衛官時代の経験を生かして雑誌やアニメに登場するヘリコプターの監修を行う。現在は実家のある日本最北の礼文島で僧侶をしながら記事を書いている。

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