全車グリーン車 新時代の特急「サフィール踊り子」は他地域でも適用できるか

オールグリーン車の定期特急、どこなら運行できそうか

 JR東日本は「サフィール踊り子」の導入に際し、ゆったりとしたプライベート空間やくつろぎ感を重視しています。それゆえ普通車を設けずカフェテリアを設け、車内販売を実施しました。ただ「スーパービュー踊り子」で好評であった「子どもの遊び場」などは姿を消しています。

 それでも「サフィール踊り子」が高級路線に舵を切ったのは、沿線に首都圏という巨大なマーケットを抱える上、向かう先が別荘地として有名な伊豆高原、高級温泉旅館の多い伊豆熱川、伊豆稲取だからです。「1日で良いから『非現実的な旅』をしたい」と思う、高額所得者による需要が多いことも確かでしょう。

 では、このような全車グリーン車かつ座席指定車の定期特急列車を、他の路線で展開しようとすれば、どこで成り立つでしょうか。

 結論をいえば、筆者(堀内重人:運輸評論家)は北陸本線を経由する大阪~和倉温泉間ぐらいかと考えます。北陸地方には、芦原温泉、粟津温泉、山中温泉、山代温泉、片山津温泉、和倉温泉などのメジャーな温泉が点在します。特に和倉温泉の加賀屋は高級温泉旅館として有名であり、先述した伊豆のような「非現実的な旅をしたい」という需要が多くあります。

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和倉温泉の「湯元の広場」(画像:写真AC)。

 事実、国鉄時代から特急「雷鳥」に併結させる形で、全車グリーン車で構成されたジョイフルトレイン「ゆぅトピア和倉」が運転されるなど、「サフィール踊り子」のような特急列車が育つ土壌があります。また特急「雷鳥」にはグリーン車が2両も連結されたほか、食堂車が健在であった期間も長く、食堂車が廃止された後も、一部の列車に和風車「だんらん」が連結されました。

 温泉の宿泊客だけでなく、大阪~金沢間はビジネス需要も多いため、全車グリーン車かつ座席指定の定期特急列車も成立するかもしれません。しかし北陸本線は、2023年ごろに予定されている北陸新幹線の敦賀駅延伸に際し、金沢~敦賀間が並行在来線としてJRから切り離されます。新しいタイプの特急が実現する可能性は低いばかりか、大阪や京都から和倉温泉などへ行く場合、敦賀と金沢で2回も乗り換えを強いられることになります。

【ボンネット特急】大阪~金沢間を結んでいた特急「雷鳥」

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コメント

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3件のコメント

  1. 関西圏ターゲットで関東圏と同じようなものは微妙だと思うけど。
    プレミアムなグリーン車はあってもいいけど、普通車でもハイグレードなものというほうが
    あの地域には好まれるのでは?
    近鉄の「ひのとり」でもそのような構成にして高評価ですし

  2. しまかぜが既にあるから関西圏で実現出来ないということは無いよ

  3. 非現実、ではなくて、非日常のほうが