世界遺産を線路が横切る“はずではなかった”? 近鉄奈良線、移設合意も長い道のり
世界遺産にも認定されている奈良・平城宮跡を、鉄道路線が横切っています。近鉄奈良線です。当然、県は近鉄に線路を移設するよう要望しているわけですが、線路が敷設された当時は、平城宮を避けていた“はず”でした。
いや、元々は避けて線路を通したのだが…
世界遺産ともなれば、その対象物はもちろん、周辺環境もあわせて保護されることが一般的です。都市部にあれば景観に配慮し、周囲での開発行為なども厳しく制限されます。
奈良県には世界遺産に登録された物件がいくつかありますが、そのうち奈良市にある平城宮跡には、なんと鉄道の線路が横切っています。朱雀門から大極殿へ至る途上には踏切も。大和西大寺駅から東へ約2kmの場所です。
平城京は中国の長安(現・西安)をモデルにした都です。その平城京の核となる区画が特に平城宮と呼ばれます。そこを近鉄奈良線の線路が、敷地を南北に分断するかのように横切っているのです。その光景を目にすると、なぜ世界遺産の中を鉄道が横切っているのだろう、近鉄は迂回して線路を建設すればよかったのではと疑問が湧きます。
タネを明かせば元々、近鉄の前身である大阪電気軌道が大和西大寺駅から近鉄奈良駅へと線路を敷設する際、平城宮を避けていました。この区間の線路が南へとカーブしているのは、そのためです。
大阪電気軌道が線路を敷設したのは1914(大正3)年です。当時は発掘調査や研究が現在ほど進んでいなかったこともあり、平城宮の範囲があやふやでした。今でこそ線路は平城宮を分断しているように見えますが、近鉄は当時としては最大限の配慮をして平城宮を避けていたのです。
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