ソ連から逃げろ! スターリンを悩ませたドーリットル8番機問題とその乗員の「脱出劇」

日本を初めて空襲したことで知られるドーリットル爆撃隊、その8番機は予定を大きく外れウラジオストク付近へ着陸しました。ソ連から準捕虜の扱いを受けるその乗員たちが演じた「決死の脱出劇」を追います。

日ソ中立に基づき拘束…ならば脱走だ

 結局、ソ連は駐ソ米大使に形式的な抗議を行い、日ソ中立条約に基づきB-25は没収、その乗員を拘束しました。乗員たちの収容場所は、ウラジオストックからボルガ川流域まで点々と移動を繰り返し、東西に広大なソ連の半分を移動したことになります。

 扱いは人道的で、監視警備はゆるくアメリカ大使館員との面会も可能でしたが、準捕虜であることに違いはなく、乗員はいつ帰国できるかわからない不安でストレスが溜まる一方でした。ある時ヨーク機長がアメリカ大使館員と面会した際に脱走したいと漏らしたところ、アメリカ軍のオマール・ブラッドレー少将から大人しくしているよう、直々に指示が出たほどです。それくらい、当時の日米ソの外交関係は微妙でした。

Large 20220227 01
ドーリットル隊の飛行経路。燃料が不足した8番機はウラジオストックを目指した(国立アメリカ空軍博物館所蔵画像を月刊PANZER編集部にて加工)。

 そうしたなか、ロシア語を少し話せる様になっていた乗員たちは、トルクメニスタン(ソ連邦内共和国)首都アシガバードへの移送中の列車内で、アレクサンドル・ヤキメンコという赤軍少佐と親しくなりました。ヤキメンコ少佐は乗員たちに同情し、帰国の手伝いをしようと動いてくれるようになります。

 しかし、いち軍人に過ぎないヤキメンコ少佐がソ連の外交当局を動かすことは非常に困難でした。やがてヨーク機長とヤキメンコ少佐は、ついに秘密の脱走計画を立てるにいたります。イランに出入りする密輸業者を雇い、警備の薄いソ連イラン国境を越え、イギリス領事館に逃げ込むというもので、ヤキメンコ少佐の提案によるものでした。密輸業者に払う必要経費は250ドルということで、乗員たちはなけなしの所持金をかき集めたのでした。

 脱出劇は1943年5月10日夜に実行されます。ヤキメンコ少佐と乗員たちは涙を流して別れを惜しみ、成功を誓い合ったといいます。密輸業者のトラックに乗り込んだ乗員たちは、闇夜に紛れて国境の鉄条網へ。さすがは密輸業者で、警備の薄い場所とタイミングはわかっていました。

 こうして、徒歩で鉄条網をくぐり抜け、イラン側で別の密輸業者のトラックと落ちあった乗員たちは、11日中にはイランのイギリス領事館にたどり着くことができました。

2022年現在のヴォズドヴィデンカ基地

最新記事

コメント

記事ランキング

  1. 家族が「SSSS航空券」を引き当ててしまった…! 乗る前から“異変” 保安検査員も「Oh…」 誰でも起こり得る“緊迫の一部始終”
  2. ロシア軍の爆撃機が「真っ逆さまに墜落」 地上に激突する瞬間を捉えた映像が公開 “巨大な黒煙”が立ち上る
  3. “まるで高速”な無料バイパス「全線4車線化」へ変貌開始! 一部の上下線分離まもなく 対面通行を解消 国道8号
  4. 飛行中の「日の丸特別機」に粋なサプライズ! 天皇皇后両陛下を“最新ステルス戦闘機”がお出迎え
  5. 「危なすぎる!」阪神高速“中の人”がブチギレ!? “衝撃動画”とともに呼びかける「ドライバーが守るべき3つのこと」とは
  1. 家族が「SSSS航空券」を引き当ててしまった…! 乗る前から“異変” 保安検査員も「Oh…」 誰でも起こり得る“緊迫の一部始終”
  2. あと1年足らずで「現金でバス乗れなくなります」 全路線“完全キャッシュレス化”疑問に応えるサイト開設 京王バス
  3. ETCの手前で「ガシャン!」高速入口に吊るされた「黄色い鎖」の正体は? 傷つく覚悟で“あえてぶつける”超アナログな理由
  4. ロシア軍の爆撃機が「真っ逆さまに墜落」 地上に激突する瞬間を捉えた映像が公開 “巨大な黒煙”が立ち上る
  5. 「“再有料化”でいいから4車線化して」→普通車280円になって1年 利用者負担で勝ち取った“効果”あきらかに 八木山バイパス