ブルートレインのクルーを解放した“オール電化”食堂車「ナシ20形」 超繁忙の在りし日々
ナシ20形について元シェフはどう感じた?
1969(昭和44)年より乗務された宇都宮照信シェフは以前、鉄道雑誌のインタビューでナシ20形について以下のように語っています。
「従来型のオシ17形より、走行音が軽いのが印象的でした。食堂長は車内を歩いて、お客様からオーダーを取っていました。ハンバーグやステーキは鉄板で焼き、食器類は銀器でした。朝はバターを、氷を敷き詰めたバターボウルに並べ、テーブルにはフルーツスタンドをセットして、生け花も並べました。食材は帝国ホテルにも納められる一級品でした」
なお、現役時代は都ホテルと日本食堂が調理を担当していました。
現在、京都鉄道博物館で保存中のナシ20形24号車は、1970(昭和45)年に日本車輛製造で製作された車両です。20系食堂車として最後に製造されたグループであり、寝台特急「はやぶさ」「あけぼの」で使用されています。なお「あけぼの」の食堂車は1975(昭和50)年に外されており、「はやぶさ」も同時に24系化されていますので、5年間しか使われていないことは、少し気の毒ではあります。
引退後はまず1980(昭和55)年、大阪の弁天町駅前にあった旧交通科学博物館に保存され、厨房設備を活かして食堂として使われました。筆者(安藤昌季:乗りものライター)も利用しましたが、エビフライが絶品でした。
その後、ナシ20形24号車は2016(平成28)年、新規開業した京都鉄道博物館に移設され、売店として営業開始。喫茶・軽食サービスも行われていましたが、2022年現在は新型コロナウィルスの影響により、営業を休止しています。画期的な車両だっただけに、筆者はコロナの終息と営業再開を願ってやみません。
【了】
※一部修正しました(6月3日11時10分)。
Writer: 安藤昌季(乗りものライター)
ゲーム雑誌でゲームデザインをした経験を活かして、鉄道会社のキャラクター企画に携わるうちに、乗りものや歴史、ミリタリーの記事も書くようになった乗りものライター。著書『日本全国2万3997.8キロ イラストルポ乗り歩き』など、イラスト多めで、一般人にもわかりやすい乗りもの本が持ち味。
電気レンジの採用はカシ36が最初ですね。