「蒲蒲線」つくっても不利? 競合になる「JR羽田空港線」 所要時間と運賃を比較してみた

対渋谷だと、運賃は蒲蒲線に軍配か

 蒲蒲線の渋谷~羽田空港間は計36分、運賃470円(運賃加算がない場合)です。JRは、渋谷~羽田空港間で18分、運賃540円となり、運賃では蒲蒲線が優位です(JRがりんかい線を買収すると310円となりますが)。

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東急線沿線から羽田空港へのアクセスイメージ(画像:大田区)。

 ただ、現行でも渋谷~品川間をJR、品川~羽田空港間を京急で移動した場合、最短で32分、運賃は蒲蒲線と同じ470円。蒲蒲線で大きく利便性が向上するかというと、一概にそうともいえなさそうです。

 では蒲蒲線の恩恵にあずかれる地域はどこでしょうか。東横線の特急が停車する自由が丘駅で考えます。自由が丘~羽田空港間の所要時間は26分、運賃は450円(加算がない場合)です。

 一方、同駅から渋谷駅まで特急で行き、JR羽田空港線に乗り換えた場合は計32分なので、蒲蒲線の方が6分早く空港へ行けます。運賃も700円(りんかい線を買収すると470円)ですから、所要時間と運賃の双方で蒲蒲線が優位となります。ただしあまり差が出ないのは、京急蒲田駅で地下から高架への乗り換えに6分かかることが原因でしょう。

 なお、将来的にフリーゲージトレインが実現し、軌間が異なる東急と京急が直通運転できたとしても、軌間変換に5分程度かかり、1分短縮できるだけです。

 以上は推測の域を出ないものの、利便性はJRに軍配が上がると考えられます。渋谷~蒲田間が東急線の特急で1本になれば、確かに便利ですが、競合路線どうしでいかにサービスレベルを上げるのか、両線の開業が注目されます。

【了】

【地図】蒲蒲線の刺客「JR羽田空港線」 ルートを見る

Writer: 安藤昌季(乗りものライター)

ゲーム雑誌でゲームデザインをした経験を活かして、鉄道会社のキャラクター企画に携わるうちに、乗りものや歴史、ミリタリーの記事も書くようになった乗りものライター。著書『日本全国2万3997.8キロ イラストルポ乗り歩き』など、イラスト多めで、一般人にもわかりやすい乗りもの本が持ち味。

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コメント

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1件のコメント

  1. JR羽田空港線も加算運賃が設定される可能性は相当高いと思いますが。
    新幹線のインフラを活用できた成田と違い、空港地下の難工事をゼロから行うコストを、通常運賃だけで回収するとは思えません。
    新千歳や関空(いずれも東日本ではありませんが)同様、加算運賃は不可避ではないでしょうか。
    そもそも新線建設コストを加算なしで回収できる(あるいは他路線の収支に混ぜ込める)なら、りんかい線はとっくにJR東日本へ吸収されているでしょう。
    想像ですが、JR東日本が羽田空港線の開業を機に東京臨海高速鉄道を統合、りんかい線とJR羽田空港線を共通の加算運賃制で運営する、なんてことすらあるかもしれません。