まだ言うか「ドローン万能論」「戦車不要論」極端思考の危うさ ウクライナ戦線1年で大きく変化

「ジャベリン」も“神” ではなかった

 まず小型ドローンですが、民間のドローンは軍用ドローンと比較して安価であるものの飛行時間が短く、電波の到達距離も数kmから長くても十数km程度となります。そのため、ドローンのオペレーターはロシア軍が活動する場所の近くまで接近する必要があります。なおかつ、コントローラーから発する電波の影響によって、その居場所が露呈してしまう危険性と常に隣り合わせです。

 とはいえ、ドローンも使い方次第と言えるでしょう。たとえば、野戦砲と呼ばれる大砲部隊などが発射する砲弾の誘導では、非常に大きな存在感を示しています。

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ウクライナ軍が使用し、一躍有名になった対戦車ミサイルFGM-148「ジャベリン」(武若雅哉撮影)。

 通常、野戦砲を射撃する際には、観測員と呼ばれる兵士が発射された砲弾の着弾位置を確認して、その射撃の有効性をチェックし、着弾位置を修正する必要があるなら、そのための座標情報を知らせます。そうやって野戦砲部隊は敵に効果的なダメージを与えられるよう、正確な射撃を行います。

 ただ、この観測員が担う役割をドローンで代替することができれば、人的損害を減らしつつもっと効率よく戦場および射撃目標をとらえることができるようになります。ドローンの場合、ある程度の高さから俯瞰で地上の状況を見るため、平坦な土地が多いウクライナでは重宝されているといえるでしょう。

 つまり、ドローンは戦場の全域では万能ではないものの、限定された局所的な使用方法であれば十分な効果を発揮するのです。

 一方、戦車ですが、それ自体の進化が、敵戦車を圧倒できるよう攻撃力と防御力、機動力の性能を高める形で、発展してきた経緯を持っています。つまり、戦うべき相手が戦車を揃えている以上、こちらも同等かそれ以上の性能を持つ戦車を用意する必要があったと言えます。

 もちろん、「ジャベリン」を始めとした対戦車ミサイルなども併用して相手の戦車に対して攻撃を加えるのですが、いくら強力な対戦車火器弾があっても、扱う兵士は生身であるため、万が一外してしまえば身の安全は保障できません。また、仮に一発のミサイルで敵戦車を1両撃破できたとしても、戦車は通常2両から4両のチームで動いているため、目標にしなかった他の戦車や、随伴している歩兵などから今度は自分たちが攻撃を受けることになります。

【写真】陸上自衛隊&アメリカ軍が運用する様々な対戦車火器の発射シーンほか

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コメント

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7件のコメント

  1. 西側各国は要らなくなった旧式戦車を大量にウクライナへ送り、ウクライナもこれを便利な道具として使いつぶすつもり。ドイツもイギリスも最新型だけを維持する。主力兵器の座から滑り落ちた戦車の居場所は窓際しかない。

    • 戦車は諸兵科連合の重要な構成要素。
      記事を読んでも理解できないのか?

  2. それ一つで全てをカバーできる兵器何て無いと思うし、本気で言ってるのであれば二の句はないな。
    人間の作るモノで万能の武器なんて存在しないと思ってるしね。
    あるとすれば全てを台無しにする核兵器だけでしょ。但し執行国が奪い取る取り分すら台無しになると思うけどね。
    新しい兵器が頭角を現せば、当然自分たちに使われないようにと無力化する為の兵器を作るでしょうし、カウンター兵器が完成した時に当該兵器が主力だった時にはどうなりますかね?

    この国民が有事を想定するには余りにも発想力が足りてないと思うし、向いてないと思う。自分とて一国民なので同様ですがね。
    低コストで最上の力が欲しいなんて強欲もいいところ。絶対相応の対価はあるし、もし運用コストをケチりたいのであれば、最初から防衛力なんて持たなければ良い。仮に放棄した結果何処かの隷属国に成り下がったとしても、それが国民の総意であれば自称平和主義国民達は納得するんじゃないかなって思う。

  3. 観測気球が直接協同機になり、ラジコン機になっただけ。便利になったが、基本は変わらない。
    対戦車砲や対戦車ミサイルも、歩兵の付かない戦車には待伏せ攻撃で有効ということで、今までと変わりはない。

    • 二次元の作戦しか出来ずに三次元の戦力を行う米軍に駆逐された旧軍から進歩できていない様。最近のウクライナ等の戦闘が全く学習できずに過去にしがみつく。記事の内容も理解できてないよね。

  4. ドローン万能論は極論でいうと正しい。ドローン=多プロペララジコンヘリだとなぜか思われているが実際は無人(自律)機を指す。有人に対して無人を出されたらその時点で負けだということ。中国の無人機に有人の空自機を出していることがどれだけ危機的なことか理解しなくてはならない。

  5. 軍用航空機本来の仕事(着弾観測)がようやく復活した感がある。有人固定翼機がいつの間にかやらなくなった戦術偵察を安価な無人機が代替してくれた。
    単独の戦車が対戦車兵器にやられるのは100年前から変わっていない。