ただの“かかし”なワケがない 戦闘機等を模した巨大バルーン ウクライナ戦で需要急増の理由
熱源仕込めば赤外線誘導も欺瞞OK
このバルーンデコイ、間近で見れば実機ではないことは一目瞭然ですが、筆者が最初に目にした遠距離からなら十分に欺くことができるシロモノです。実戦であっても光学センサーを通じて見た場合には、これが本物かデコイかを瞬時に判断することはできないのではないでしょうか。
なお、今回の「アバロン2023」にデコイを出展したのは製造する「インフレテック」社ではなく、アジア太平洋地域のセールスを担当するオーストラリアのスピアポイント・ソリューション&テクノロジー社。そこで、同社の社員からデコイについて、いろいろな事を聞いてみました。
説明によると、このSu-30MKI「フランカー」のデコイは畳んだ状態では140kgの重量があり、膨らませて偽装状態にするまでに35分ほど掛かるといいます。空気は2台の電動式ポンプで常に入れ続ける必要があり、その電源供給ができる限りは継続設置して偽装として使えるとのこと。また、機体表面はレーダーを照射された時にその反射波が生じる様になっており、電動ポンプで熱風を送り込めば熱源を作り出すことも可能だそうです。
また、航空機だけでなく戦闘車両のデコイも作ることができ、会場には韓国陸軍のK9自走砲を模したものも合わせて展示されていました。
こちらのデコイは同社の製品では次世代モデルにあたるそうで、パラシュートにも使われている素材をベースにしていることから軽量で、折り畳めばバッグに入れて人力で運ぶことができるそうです。設営時間も10分ほどにまで短縮されています。
また敵を欺く対策として、エンジン部分に電気毛布と同じような機構を付けることで、本物とよく似た熱源を生み出すことができ、デコイとしての偽装性も向上しているとのハナシでした。
対地ミサイルが一発数千万円程度と考えると例えデコイのバルーンが数百万円でも戦闘機よりも安いし有効な欺瞞兵器となるんだろうな。