船乗りを“陸上のサラリーマン”に変える? 空前絶後の「無人運航船プロジェクト」第2段 規模感スゴイ!

「自動運転レベル4」相当で船を走らせる!

 具体的な取り組みとしては完全自動運航が一部可能な自動運転レベル4相当を目指し、(1)避航動作を含む輻輳海域での自動操船、(2)自動離着桟・係留技術、(3)遠隔からの複数船舶の同時支援、(4)より安定的な船陸間通信の確保――これらを実現するための開発を行いつつ、規制緩和を通じた継続的な社会実装の実現と、国際規格化による国際競争力の強化を図っていくとしています。

「ステージ1で遠隔支援したのは1隻のみだったが、今回は1か所の陸上支援センターで、複数の船舶を同時に制御する。設置場所は兵庫県西宮市の古野電気。これに加えて災害時の緊急対応が可能なシステムを構築できるよう、移動型の陸上の支援センターも作ることを考えている」(海野常務理事)

 使用する船舶は既存船3隻、新造船1隻の計4隻で、全て自動運転レベル4に対応する機器を搭載します。

 このうち、国際両備フェリーの「おりんぴあどりーむせと」(942総トン)は離島航路船として、定期航路(新岡山港~小豆島土庄港)で9か月間の実証実験を予定しています。これにより離島航路で課題となっている船員不足を支える仕組みを作りつつ、離島住民の生活に必要なヒト・モノの安定的な輸送確保へ第一歩を踏み出すとしています。

 もう1隻は井本商運のコンテナ船「みかげ」(749総トン)。同船は第1ステージでも他の船を検出するセンサーとして使用しているAIS(船舶自動識別装置)とレーダーに加え、可視光カメラと夜間対応の赤外線カメラを搭載して実証実験を行いましたが、ステージ2ではより広範囲となる360度を監視できるようなセンサーを使用します。

 3隻目は川崎近海汽船のRORO船「第二ほくれん丸」(7097総トン)で、同船では漁船が多く霧も発生する海域において約20ノット(36.5km/h)の速力で自動運航を行うことが計画されています。

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ステージ2の概要を説明する日本財団の海野常務理事(深水千翔撮影)。

 そして4隻目が、2025年8月の竣工を予定している新造コンテナ船です。既存船との違いは機関プラント監視や遠隔支援機能、そして係船機能を備えており、自動運航に必要な機能を最初から備えたフルパッケージ仕様となっています。

 今後、自動運航が実現し無人運航船が一般的になれば、船員は日本各地に置かれた陸上支援センターでも勤務できるようになります。陸上勤務が増えることで、サラリーマンのような働き方が可能になり、長期乗船や人員不足で増えていた負担を大きく軽減できるようになるでしょう。日本の海運のあり方を変えるかもしれないプロジェクトが今、まさに行われています。

【了】

【え…この船でやるの!?】無人運航プロジェクトで使われる船舶(画像で見る)

Writer: 深水千翔(海事ライター)

1988年生まれ。大学卒業後、防衛専門紙を経て日本海事新聞社の記者として造船所や舶用メーカー、防衛関連の取材を担当。現在はフリーランスの記者として活動中。

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