勝算絶無の日米艦隊決戦「マリアナ沖海戦」 ゲリラに拘束されなかったら…? そこに勝機はあったか

基地航空隊の数は多いはずだった

 このようにマリアナ沖海戦は惨敗で、太平洋戦争のイフを扱った考察でもほぼ取り上げられていません。艦隊兵力だけでも、旧日本軍の空母9(艦載機428機)、戦艦5、重巡11、軽巡2、駆逐艦22+補給部隊の軽巡1、駆逐艦5、海防艦4に対し、アメリカ軍は空母15(艦載機901機)、戦艦7、重巡9、軽巡8、駆逐艦67と圧倒的です。

 さらにアメリカ軍はこれとは別に、上陸部隊支援用の護衛空母15(艦載機314機以上)、戦艦7、重巡1、軽巡2、駆逐艦36隻を保有しており、勝ち目はありませんでした。

 旧日本軍は、計画ではマリアナ諸島に1644機の航空機を配備し、空母と合わせればアメリカ艦隊を上回るはずでしたが、実際に作戦可能だった航空機は、その2割程度でした。アメリカ軍に対処するために兵力を移動し、整備員や武器弾薬も分散、各個が撃破されたのです。

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マリアナ諸島のロタ島沖で、アメリカ軍機の攻撃を受ける日本の輸送船(画像:アメリカ海軍)。

 こうしたことから、史実の作戦だと旧日本軍は善戦も難しかったでしょう。もし、日本の作戦計画が漏洩しなければ空母も訓練ができ、さらにアメリカ軍攻撃目標がマリアナと確信していたら、少なくとも基地航空隊の分散は避けられたはずです。

 この場合は基地航空隊の機数が多いことで、アメリカ軍上陸部隊を発見できるかもしれません。その情報を受けて、日本空母艦隊が目標を上陸部隊に絞ったなら、どうでしょうか。上陸部隊には護衛空母15隻が随伴していますが、アメリカ主力空母艦隊よりは対空防御力が弱く、上陸船団の輸送船には12万人の米兵が乗っています。輸送船ごと相当数を沈められたのなら、日本艦隊は壊滅と引き換えに、アメリカ軍の士気やサイパン島の陸戦に影響を与えられたでしょう。

 次に、後知恵で考えたらどうでしょうか。旧日本軍は1943(昭和18)年のガダルカナル島撤退後の戦いに問題があったといえます。日本本土から遠く、補給線も長いラバウルに航空兵力を集め「ろ号作戦」などを進めていました。ラバウルはアメリカから見て、空母艦載機と基地航空機を集中できる立地です。旧日本軍は陸揚げした空母艦載機を含む多数の航空機を失っています。マリアナであれば、アメリカ基地航空隊はほぼ介入できません。

【写真】撃沈されマリアナの海底で眠る日本の艦船

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