「貨物」じゃないよ「荷物車」の系譜 なぜ鉄道でいろいろなモノを運ばなくなったのか?
首都圏でも見られる新聞輸送
前述した通り荷物列車は「旅客列車に併結される荷物輸送設備」でしたが、荷物の積み下ろしが旅客列車の遅延を招く問題があり、1960年代より一部の輸送を自動車化したり、旅客列車から荷物車を外して、荷物専用列車を運行したりしました。もはや貨物列車と何が違うのかという列車です。
国鉄は1966(昭和41)年に旅客部門と貨物部門を分離するも1974(昭和49)年に再び統合し、1985(昭和60)年には荷物と貨物を一元化して分離と、経営の都合で迷走するのですが、翌1986(昭和61)年に郵便・荷物輸送そのものが廃止され、郵便・荷物車自体が不要となります。
50系客車の荷物車マニ50形などには1982(昭和57)年製造のものもあり、これは4年半しか使われていませんでしたが、大半が廃車されています。なお、マニ50形2186号は電源車に改造され、現在でも豪華列車「ロイヤルエクスプレス」が非電化区間を走る際に連結されています。
また、寝台特急での新聞輸送と「ブルートレイン便」と呼ばれる一般向け荷物輸送は、この時点では廃止されませんでしたが、1990~2010年代の列車廃止で消滅しています。
2024年現在、荷物列車は廃止されて存在しませんが、1994(平成6)年に運行開始した関空特急「はるか」には荷物室が設置されて、訪日客の荷物を京都駅で預かり、関西空港まで送るサービスが行われていました。このサービスはアメリカ同時多発テロ事件を受けて、空港以外での手荷物検査を認めなくなったことで2002(平成14)年に廃止されています。
なおJR高崎線や宇都宮線の一部列車では、営業車両を区切って新聞輸送をしているなど、ごく限定された範囲での荷物輸送が行われています。郵便輸送については、JR貨物が航空禁制品や、速達性を必要としない郵便物をコンテナ貨物列車で輸送しています。
【了】
Writer: 安藤昌季(乗りものライター)
ゲーム雑誌でゲームデザインをした経験を活かして、鉄道会社のキャラクター企画に携わるうちに、乗りものや歴史、ミリタリーの記事も書くようになった乗りものライター。著書『日本全国2万3997.8キロ イラストルポ乗り歩き』など、イラスト多めで、一般人にもわかりやすい乗りもの本が持ち味。
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