線路見れば一目瞭然? 日本の鉄道が「災害に弱い」残念な理由 1か所不通で“どうにもできなくなる”ギチギチ思想

災害の激甚化で鉄道が不通になり、物流へ大きな支障が生じるケースが相次いでいます。海外では複数のルートから代替路を選択し、物流を止めない思想がありますが、日本は真逆とも言える状況。その思想は線路にも見て取れます。

「冗長性」がない国民の不幸

 こうして比較してみると、欧州は大量輸送機関である艀と鉄道の両方にコンテナを誘導することで、冗長性を高めるだけでなく、一人当たりの輸送生産性・港湾の競争力を高め、環境や人手不足の問題に対応しています。

 一方、日本は道路・トラック輸送に偏重しているため人手不足になり、大量輸送機関である内航海運や鉄道は貨物量を確保できないため改良投資ができず、固定費も回収しづらく運賃が高止まりし、国全体の輸送効率と国際競争力を引き下げている上に、災害にも弱いという構図に陥っているように見えます。強いはずのトラックも運賃ダンピングが激しく多重下請け構造に陥っていますので、運行事業者も国民も幸福にはなっていないようです。

 他方、高速道路は前出したΔ分岐のほか、軸重制限も全国統一となっていて冗長性がありますが、北陸の豪雪などに見られるように、広範囲の降雪などでの代替手段がありません。また、日本の鉄道コンテナは独自規格のためコンテナ船に載せることができません。世界規格のISOコンテナへの対応が冗長性確保の鍵となるでしょう。

 希望もあります。日本でも背高コンテナを除けばISOコンテナの鉄道輸送は可能です。日本列島は日本海と太平洋に挟まれ海港が豊富にあり、欧州に比べ運河や閘門の維持負担や河川の渇水・洪水のリスクもありません。日本海縦貫線(羽越・信越・旧北陸本線ほか)や上越線は電化されており、各地にあるコンテナ港と結べば冗長性を高められる可能性があります。

 輸送モード間の連携は輸送形態や契約・運賃・システムをはじめハードルが多々ありますが、欧州では国や鉄道会社を跨って実現しています。対して、国内輸送で完結し貨物鉄道が実質1社である日本の方が、ハードルは低いのです。

冗長性の確保に「誰がお金を出す」のか

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独contargo社の港での積み替え風景。1つのクレーンで艀・鉄道・トラック・陸置のコンテナ積み替えが可能(画像:contargo)。

 大量輸送インフラがいざという時に役立たないと、社会的価値は毀損されますし、経済活動に重大な影響を与えます。阪神淡路大震災で線路が崩壊した際、JR西日本は生き残った貨物線などを使い、いち早く運行を再開しました。鉄道の冗長性が有効なことは日本でも実証されているのですが、社会資本整備にまでは至っていません。

 普段は使わない備えである冗長性を「無駄」と捉えるのか、インフラの強靭性・柔軟性・社会的価値を高める「投資」と捉えるのか。これは行政の補助で鉄道や港湾の設備投資をする際にも考え方を見直す必要があるかもしれません。

 国土を支える大量輸送インフラの冗長性と輸送生産性の向上を、誰が旗振りをして誰がお金を出して進めていくのか。災害列島日本において、これが見えない事が最大のリスクだと思えます。

【了】

【え…廃線!?】鉄道の分岐点「Δ線」をやめてしまった場所(航空写真)

Writer:

1987年早大理工卒。若桜鉄道の公募社長として経営再建に取り組んだほか、近江鉄道の上下分離の推進、由利高原鉄道、定期航路 津エアポートラインに携わる。現在、日本鉄道マーケティング代表として鉄道の再生支援・講演・執筆、物流改革等を行う。

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