法律違反じゃないの?「地面スレスレを飛ぶ自衛隊ヘリ」実は問題ない場合も

空中統制用のヘリが出動する場合も

 いざ派遣要請があれば、これまで格納庫などで待機していた自衛隊のヘリコプターは被災地に向けて飛び立ち、誰ひとりも残さぬように、低空で飛行し被災者を探し助け出そうと活動します。
 
 とはいえ、災害時といえども無秩序に飛行できるワケではありません。無秩序に飛び回ってしまっては危険性が急激に高まってしまうことから、空中(空域)統制という役割を持った航空機(ヘリコプター)が、被災地周辺空域で活動する他のヘリコプターの動きをコントロールするように規定されています。

 さらには、〇〇県は航空自衛隊、△△県は陸上自衛隊というように、飛行できる空域もコントロールされるため、活動範囲は拠点となる基地や駐屯地の周辺となることが多いです。

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おおよそ地上400mからの景色。この状態で被災者を見つけ出すのは非常に困難だ(武若雅哉撮影)。

 ただ、一方で2024年1月1日に発生した能登半島地震に際して、国土交通省は救助に係る全ての航空機の運航に対して、航空法第79条(空港等以外への離着陸許可)、第81条(最低安全高度以下への飛行許可)、第89条(物件の投下の届出)については、申請者からの電話連絡による手続きを認めるといった通知も出しています。

 従来は書類による手続きが必要でしたが、これにより電話一本でより柔軟な運用ができるようにしたのです。

 また、自衛隊機は最初から適用除外ですが、航空機による「爆発物の輸送に係る手続き」、「耐空証明の有効期間満了」、「航空身体検査証明の満了」、「特定操縦技能審査(操縦技能証明)」も、能登半島地震の災害救助に係る航空機やパイロットは、適用除外になっています。

 日本は災害大国です。地震に限らず台風や豪雨、山林火災なども毎年のように起きています。また過去には火山噴火に伴う災害出動などもありました。そういったときに、いち早く駆け付け人命救助を行うために、実は人知れず柔軟な運用が行われているのです。

【了】

【これも航空法の適用除外です】お尻からポロン! 後部から見慣れないものを放出した航空機(写真)

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Writer: 武若雅哉(軍事フォトライター)

2003年陸上自衛隊入隊。約10年間勤務した後にフリーフォトライターとなる。現場取材に力を入れており、自衛官たちの様々な表情を記録し続けている。「SATマガジン」(SATマガジン編集部)や「JWings」(イカロス出版)、「パンツァー」(アルゴノート)などに寄稿。

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