どうやって行くの!? 見た目は「孤島の秘境駅」に人が次々くるワケ それは全て“戦略”だった!
「島のように駅を写せる」と話題に
新線付け替えの前、犬間駅付近の家々は移転し、そこは無人の秘境駅状態でした。駅の移転先は対岸の山間部となったのですが、その場所も道路ばかりか家すらない天狗石山の尾根の先端部で、駅の前後に橋梁が架けられました。
移転先に人里がないということは、たいていの場合、信号場のような列車交換設備が駅開設の目的となりますが、構造は1面1線の棒線駅タイプです。駅前は湖となり、背後は尾根の急斜面が迫って、獣道のような山道しか存在しません。
ではなぜそこに駅を設置したのかというと、観光目的で人々を呼べると大井川鐵道の目論みがあったからでした。
長島ダムの竣工後、尾根の先端に設置した奥大井湖上駅は、湖にポツンと浮かぶ島の駅のように見えます。ホーム背後の斜面にはログハウスが建設され、そこから駅と湖を眺望できます。駅名に「湖上」を取り入れたのも、湖の上の観光駅を意識したからです。
ただし駅が移転した1990年代前半は、まだ秘境駅という言葉が浸透する前です。昨今のようにアクセス性の悪さに注目して秘境駅と銘打つわけではなく、眺望と駅の環境を楽しむ観光駅の意味合いが強かったといえます。
2024年8月の休日、千頭駅発の始発列車は4両編成の各車両にほどよく観光客が乗車しています。奥大井湖上駅へ到着すると半分以上の人が下車しました。列車はすぐに発車しますが、人々は帰りの列車までホームやログハウスで、島のような湖上駅を堪能。観光用の駅としてすっかり人気な存在となっていました。
その一端を担ったのが、メディアの紹介と誰もが発信側となれるSNSの普及です。テレビでは不思議な駅や秘境駅と紹介され、SNSでは写真が国内外へと拡散しました。駅から見る光景だけでなく、対岸から「島のように駅を写せる」スポットも反響を呼んだのです。奥大井湖上駅は2019年に外国人が選ぶクールジャパンアワードを受賞し、「映え」によってより国内外の人々の注目を浴びることになりました。
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