どうやって行くの!? 見た目は「孤島の秘境駅」に人が次々くるワケ それは全て“戦略”だった!

観光客を誘致する、あの手この手の施策とは

 奥大井湖上駅が面白いのは、ほぼ列車でしか来られない環境の駅のはずなのに、列車が来ない時間帯でも次々と観光客が訪れることです。これにはカラクリがあり、駅と対岸を結ぶ橋梁「レインボーブリッジ」の脇に人道スペースがあって、駐車場から少しの山道散策で簡単に訪れることができるのです。自動車利用でも気軽に来駅でき、駅の訪問者数を増やしています。

 また大井川鐵道では、奥大井湖上駅のイベントを企画しています。過去には結婚式が挙げられ、直近では2023年に開催した「冬の奥大井湖上駅漫喫ツアー」や、人家がない環境を活かして、真冬の透き通った星空を堪能する「星空列車」を実施しました。なお、星空列車は2024年も開催予定とのことです。静岡市内から奥大井湖上駅へのツアーもあり、遠方だけでなく県内の人々にも向けた取り組みも実施しています。

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星空列車のシーン。人工の明かりが極端に少ない駅の環境を活かし、夜間のホームから満天の星空を堪能するツアーが開催された。2022年12月25日撮影(写真提供:大井川鐵道)。

 最近では井川線=奥大井湖上駅と連想するほどの代名詞となり、気軽に立ち寄れる秘境駅となっています。ログハウスには期間限定でカフェも開店します。とはいえ周囲は何もない環境であることに変わりはありません。飲料自販機もなければ道路もなく、対岸に路線バスはありますが本数も少ないです。都会の延長の気軽さから、手ぶらで来る人もいるそうですが、最低限の飲食物と虫よけ対策は必須でしょう。

 いかにも行きづらい秘境駅、といった趣の奥大井湖上駅ですが、1日の平均利用者数は152名(2023年度、大井川鐵道調べ)で、実は井川線では指折りの乗降客数です。大井川鐵道全体でも6番目となります。にぎわう秘境駅として、今後も人々の感動を与えてくれることでしょう。

【了】

【人がいるいる!】これが「キング・オブ・秘境駅」の実態です(写真)

Writer: 吉永陽一(写真作家)

1977年、東京都生まれ。大阪芸術大学写真学科卒業後、建築模型製作会社スタッフを経て空撮会社へ。フリーランスとして空撮のキャリアを積む。10数年前から長年の憧れであった鉄道空撮に取り組み、2011年の初個展「空鉄(そらてつ)」を皮切りに、個展や書籍などで数々の空撮鉄道写真を発表。「空鉄」で注目を集め、鉄道空撮はライフワークとしている。空撮はもとより旅や鉄道などの紀行取材も行い、陸空で活躍。

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