高性能すぎて困っちゃう!?「自衛隊の新型練習機」学生への負担大かも… 解決策はあるの?
航空自衛隊のT-7初等練習機の後継に、アメリカ製のT-6「テキサンII」が選定されました。同機は高性能なプロペラ機として各国で採用されている傑作機ですが、それゆえに学生を困らせる懸念もあるそうです。
高性能すぎてデメリットも
とはいえ、T-6「テキサンII」が航空自衛隊の初等練習機に最適なのかというと、そこは議論の余地があります。
最大の課題は、性能があまりにも優れ過ぎている点です。アメリカ空軍では、同機を「初等練習機」ではなく「中等練習機」として使っています。すなわち、基礎的な飛行訓練は民間機と変わらない軽飛行機で行っており、2段階目の機種としてT-6「テキサンII」を用いています。
航空自衛隊の場合、現在の訓練システムではT-7練習機が最初の機体という位置づけです。そのため、T-「6テキサンII」のような高性能機を導入すると、訓練内容が過剰になり、学生パイロットにかえって技術的な負担を強いる懸念が生じます。また、運用コストの面でも課題があります。高性能な機体ほど維持費や燃料費が増大するため、コスト効率が問題視される可能性があります。
ゆえに、航空自衛隊がこれらの問題にどのように対応するかが注目です。解決策のひとつとしては、もう1機種、初等訓練専用の簡易な機体を別途導入する案が考えられます。これはアメリカ空軍と同じ訓練課程を整備するということになります。
また初等訓練を民間に委託している国もあります。こうすることにより、T-6「テキサンII」は中間段階の訓練に特化し、その高性能を最大限活かせるようになります。
シミュレーターの活用も重要な鍵となるでしょう。初等訓練の一部を地上シミュレーターで代替することで、学生パイロットがT-6「テキサンII」の高性能に慣れるまでのハードルを下げることができます。これなら、運用コストの削減にも繋がります。
航空自衛隊がこの新たな練習機をどのように活用し、課題を克服していくのかは、今後の日本の航空防衛力を左右する重要な要素になると、筆者(関 賢太郎:航空軍事評論家)は今回の防衛省の決定を受けて感じました。
Writer: 関 賢太郎(航空軍事評論家)
1981年生まれ。航空軍事記者、写真家。航空専門誌などにて活躍中であると同時に世界の航空事情を取材し、自身のウェブサイト「MASDF」(http://www.masdf.com/)でその成果を発表している。著書に『JASDF F-2』など10冊以上。
現代であろうと、ひよっこパイロットがいきなり“ゼロ戦”を飛ばすのは無謀だからね
米海軍は、操縦士と航空士(戦術航空士など)もこの機体で教育を受けます。コースは別の入り口。ただし、この機体の前に民間の機体(軽飛行機)で単独飛行の経験を積んでいます。