ラッシュ時に山手線が止まった… 「信号が変わらない」は故障じゃない!? 事故を未然に防いだ仕組みとは

JR山手線が朝ラッシュ時間帯に止まるトラブルがありました。原因は赤信号が切り替わらなくなったため。ただ、さらに突き詰めると、レールにひびが入っていたことも判明しました。なぜレールにひびが入ると、赤信号のままになるのでしょうか。

運転台に表示される「赤信号」

 また、山手線では原則として線路脇に信号機を設けず、運転台に信号を表示する仕組みを備えています。列車はレールから信号情報を受信して運転台に表示しているのです。

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山手線で使用されているE235系電車の運転台。速度計などの計器類は画面で表示され、速度計の周りに信号機が表示される仕組み(2025年2月、柴田東吾撮影)

 仮に、レールに流した信号情報を受信することができなくなった場合、列車側では「赤信号」と判断して列車を止めるように設計されています。これもフェイルセーフの考え方のひとつです。

 山手線の車両では、速度計が画面上に表示されますが、この速度計には許容された速度の上限が表示されています。前を走っている列車や急な曲線に近づいた場合は、許容された速度が下がっていき、前の列車の真後ろに付いた場合などでは速度が0、つまり「赤信号」となります。

 さらに、列車の速度が許容された速度を上回りそうになった場合には、自動的にブレーキがかかる仕組みも備えています。こういった車両側の制御も、レールから送られる信号情報があってこそです。

 列車の安全運行は、幾重にもガードされた仕組みによって保たれています。通勤ラッシュの時間帯に列車の運行が止まるのは困ったことですが、今回の事例は、ひびの入った線路を前にして、安全に列車を止める仕組みが正しく機能していた証でもあるのです。

【写真】レールにひびが入った場所を見る

Writer:

1974年東京都生まれ。大学の電気工学科を卒業後、信号機器メーカー、鉄道会社勤務等を経て、現在フリー。JR線の2度目の「乗りつぶし」に挑戦するも、九州南部を残して頓挫、飛行機の趣味は某ハイジャック事件からコクピットへの入室ができなくなり、挫折。現在は車両研究が主力で、技術・形態・運用・保守・転配・履歴等の研究を行う。鉄道雑誌への寄稿多数。資格は大型二種免許を取るも、一度もバスで路上を走った経験なし。

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