本当は怖い? 初の死亡事故が起きたクルマの自動運転、意識改革必要か

「自動ブレーキ」とは逆になる「自動運転」

 テスラの自動運転センサー技術は、スバルの「アイサイト(ver.3)」と同レベルか少し劣っているというのが、専門家の一致した見解です。つまり、テスラの自動運転をONにするのは現時点ではまだ「冒険」であり、自分で運転するよりも高い集中力が必要です。

 またテスラの自動運転は、ウィンカーを出すと車線変更も自動的に可能ですが、交通量の多い道路ではまさに「冒険」そのもの。ウィンカーを出すタイミングを測るには、非常に高度な運転先読み技術が必要です。逆にそこが面白味でもあり、個人的にはこれほどのリスクを冒して新技術の実用化にいち早く挑戦するテスラ社には尊敬の念を抱いていますが、ドライバーは「自動運転のほうがかえって難しい」という事実を理解する必要があります。

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テスラでは、ステアリング奥のレバーで自動運転の設定を行う(2016年1月、清水草一撮影)。

 自動運転がONになっているときは、“ドライバー自身が最後のセーフティネット”です。いわゆる「自動ブレーキ」は、“人間のミスをカバーする機械的なセーフティネット”ですが、自動運転の場合、その順序が逆になるのです。

 しかもドライバーには「クルマが危機を回避してくれるはず」という予断があり、危ないと思っても、「いや、もう少しクルマにまかせよう」と思ってしまいます。たとえわき見をしていなくても、その分、ブレーキを踏んだりステアリングを切ったりする動作が遅くなる可能性が高いのです。

 テスラ社に限らず、現在の自動運転技術はまだあくまで「ドライバーをサポートするもの」です。では、ドライバーが介在する必要のない「完全自動運転」が実用化されるのはいつでしょうか。

 それは「自動運転による事故の確率が限りなくゼロに近づいたとき」としかいえません。特に、一般道における自動運転は歩行者や自転車という不確定要素が存在しますから、ドライバーが“最後のセーフティネット”として待機しない限り、なかなか難しいでしょう。

 たとえリスクが限りなくゼロになっても、万が一の事故の際には、誰かが責任を取らねばなりません。免許を持たない高齢者が通院に自動運転車を使えるようになるのは、かなり遠い未来のことだと予想します。

【了】

Writer: 清水草一(首都高研究家)

1962年東京生まれ。慶大法卒。編集者を経てフリーライター。『そのフェラーリください!!』をはじめとするお笑いフェラーリ文学のほか、『首都高はなぜ渋滞するのか!?』などの著作で、首都高研究家/交通ジャーナリストとして活動中。

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コメント

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6件のコメント

  1. 危機感をあおるのはライターの自由ですが。

    で、どうしろと?開発を直ちに止めるべきだとでも思っているんですかね。
    一般道で使えない、高速道路限定だったとしても十分実用的だと個人的に思います。
    アポロ1号の事故のように萎縮するのではなく、寧ろ前向きに考えてもらいたい。

  2. 白線の問題もそうですが、日本のいい加減な道路事情や、自動に甘える運転者の意識を根本的に改善しないかぎり、日本では当分無理でしょう。危機感も何も、自動運転同士で事故るのは勝手ですが、他の車や歩行者にまでとばっちりが来られたらたまらない。

  3. 自動運転など夢のまた夢だと思います。
    まずは高速道路にチップを埋め込んで、高速道路限定で実施するべきだと思います。
    それはそんなに難しいことではないはずだし、高速限定であれば歩行者の問題もない。

  4. 自動運転の至らない部分を人間が補佐するとなると、いつ出番が出るか分からない状態でスタンバってなければならず、これでは自分で運転した方が楽、自動運転の意味が少ないと思う。
    少なくとも市販車は、部分的に自動化や運転者の見落としの拾い上げすることで運転者の負担を減らす方向がいいのかなと思います。
    今の自動ブレーキや車間維持などに加えて、レーンチェンジ、追い抜き、車庫入れなど。

    ガイド機能つけた高速道路限定でも、手動運転の車が混在する道だと安全確保は可能か?
    自動車間維持・自動操舵くらいはできそうですが、それでは運転者が寝てしまい想定外対応できない。
    電車やLRT的に、自動運転専用道路みたいなのがないとむずかしい気がします。

  5. 自動の定義とは…

    どれもホントに自動?
    エアコンの自動モード・タッチしないと開かない自動ドア・車のオートマ

    ホントに自動ですか

    車なんて人の命乗せてるのに、飛行機・電車は?

    人間が作るものはセミオートマチックでフルオートマチックなんて有るんでしょうか

  6. この記事の要旨は「ヒトが介入せねば安全に走行できない」という実例を挙げたうえで「(少なくともテスラSについては)クルマに運転を任せるのは時期尚早だ」につきる。

    末尾に「免許を持たない高齢者が通院に自動運転車を使えるようになるのは、かなり遠い未来のことだと予想します」とある通り、清水草一は自動運転車が普及することを前提としている。よって彼は「開発を直ちに止める」旨を主張していない。

    私はBMW_i3に試乗した際、渋滞時の追従性能(その安楽さ)に驚いたが、それ以上に左折しようとハンドルを切った途端に横断歩道に向けて加速したこと(運転者の意志との相違)に驚いた。
    いうまでもなく、この件については死角監視システムとの統合制御ていどで改善できる問題だが、それでも安全な自動運転には航空機的な相互通信による位置確認による制御システムがすべての自動車に搭載されたうえで、対人・対物(およびTCAS未搭載車対策)を目的とした周辺監視も統合運用されねばならないことは容易に想像できる。

    それが「かなり遠い未来」なのか、フルモデルチェンジ2回分なのか、それは別の問題である。