事故ると最悪な「無保険車」増加の懸念? 街から消える“自賠責”の窓口 ビッグモーター事件の思わぬ余波

バイクショップや自動車整備業が自賠責保険の代理店契約を打ち切られるケースがあります。きっかけは保険代理店と保険会社の不正な癒着が問題となった、ビッグモーター事件でした。

「自賠責は本来もうけるためのものではない」と保険会社トップは明言したが

 契約を打ち切られる代理店の多くは、バイクショップや自動車整備業者です。これらの事業者は、車検が不要な車両を扱っていたり、販売を副業としていたりするため、保険会社の販売強化には直接つながりにくいと見なされています。

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旧ビッグモーターの店舗(中島みなみ撮影)

 自賠責保障制度を共同で担当する国土交通省も、監督強化のなかで代理店が減っていることを把握しているとしつつ、次のように話します。

「代理店の質の向上は評価できますが、自賠責加入率への影響は否定できません」(保障制度参事官室)

 代理店統合によるコスト削減は、任意保険では保険料引き下げとして契約者に還元できます。しかし、自賠責保険は被害者救済を最優先とする社会的なセーフティーネットであり、アクセスのしやすさこそが制度の根幹です。

 電動キックボードやペダル付バイクなど、新しいパーソナルモビリティの登場時、販売事業者の多くは自賠責制度を共に守る方向には動きませんでした。購入者の判断と責任で加入すべきだと問題を先送りした結果、未加入車両の摘発という警察の手法に頼らなければ、社会不安を払拭できない状況に陥っています。

 車検と自賠責保険加入がセットになっている車両でも、車検を受けずに無保険で運行する事件が起きています。自賠責保険加入の義務があるにもかかわらず、購入者の自己責任で加入を徹底することは、現実的な被害者救済策にはなりません。無保険車が起こした事故でも、被害者の人的被害は、保険加入車全体で支えているのです。

 ビッグモーター事件の不正の本質は、保険会社とビッグモーターが自賠責保険を“道具”として利用し、特定の保険会社の任意保険加入へ誘導したことにあります。そして、任意保険に付帯する車両保険で不正請求を行い、両者の利益を最大化したのです。代理店管理の強化が必要な任意保険とは根本的に異なる自賠責保険で、同様の代理店整理を進めてもよいのでしょうか。

 事件の当事者となった損保ジャパンの当時の経営者は「自賠責保険は本来儲けるためのものではない」と発言しました。自賠責保険で保険各社が自由な利益を設定することはできませんが、毎年開催される審議会で、保険会社と代理店双方に適正な手数料が上乗せされています。

 自賠責保険の保険料率(=保険料)を決める金融庁は、この事態をどう考えているのでしょうか。金融庁は「代理店の整理を進めるという指示はしていない」、日本損害保険協会も「そのようなガイドラインは作っていない」と、自賠責保険の代理店整理に関与していることを否定します。

 しかし、金融庁は自賠責保険の代理店数もその増減も把握していません。保険代理店の契約は保険会社に一任され、任意保険と自賠責保険を取り扱う代理店で求められる能力にどの程度の違いがあるのかについても、把握していません。金融庁、国交省、損保業界、自動車業界、保険加入者、すべての関係者が自賠責保険制度は何のためにあるのか、今一度共通認識を持つ必要があります。

【え…!】「無保険」で捕まった車両が「栃木県警察」と書いてあるんだが…(写真)

Writer:

1963年生まれ。愛知県出身。新聞、週刊誌、総合月刊誌記者を経て独立。行政からみた規制や交通問題を中心に執筆。著書に『実録 衝撃DVD!交通事故の瞬間―生死をわける“一瞬”』など。

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コメント

1件のコメント

  1. 自賠責でも保険会社と代理店には手数料が入る。そしてかつての損保は個人の小規模代理店を営業の中心に据え大事にしていたが、20年ほど前からは会社組織をとる大型代理店への強制チェンジを断行中だ。

    これは分業式の大型代理店の方が効率的に営業できるという判断だが、当然、小規模代理店は廃業か保険取り扱いを止めることになる。

    さらに言えばその大型代理店とは損保が出資して設立したものも多く、損保社員が出向したり移籍したりと事実上のグループ会社化されていたりする。つまり利益の吸い上げだ。

    かつての損保は小規模代理店を地元密着の小回りのきく存在として重宝したが、大規模集約化が進み姿を消した。

    この記事にあるバイクショップも兼業小規模代理店として切られたのだろう。本来は保険会社と代理店との代理店契約は対等であるが、実際はもちろん、対等などではない。

    それにしても業界の不祥事のあおりを弱者に負わせるとは、知ってはいたものの、保険業界もエグいですな。