中東から避難民救出「ただし、トイレがちゃんとした機体で!?」 わざわざ“輸送機じゃない”機体で行ったもっともなワケ

中東からの民間人輸送に、韓国空軍が輸送機ではなく「空中給油機」型を投入しました。自衛隊も同様のケースで同種の機体を待機させていましたが、その大きな理由は「トイレ」にあるかもしれません。

実は重要!「トイレ」の存在

 筆者は2026年2月に、スペインのセビリアでエアバスの戦術輸送機「A400M」の製造現場を取材する機会を得ました。その時、筆者と共に取材をしていた方が、A400Mと前に述べたA330旅客機のトイレが良く似ている、と話していたのが強く印象に残りました。

 飛行中はなるべくトイレを使用しないように訓練された兵士(隊員)だけが搭乗するのであれば、トイレは最低限度で構わないのかもしれません。航空自衛隊が2019(平成31)年まで運用していた人員輸送機のYS-11Pには、旅客機型のYS-11より簡素なトイレが設けられていたと、運用に携わっていた航空自衛隊の隊員の方から聞いたことがあります。

 2021年8月にタリバンが掌握したアフガニスタンのカブールから、大量の避難民を短期間に欧州へ空輸したのもA400Mでした。このように輸送機や空中給油・輸送機には避難民をはじめとする民間人が搭乗することもあるので、トイレは快適であるに越したことはないでしょう。

 A400Mのトイレが旅客機並みなのは、旅客機のトップメーカーであるエアバスに居住性への配慮があるのではないかと思いましたし、韓国空軍と航空自衛隊が避難民の輸送に空中給油・輸送機を充てようとした理由の一つは、ここにあるのではないかと筆者は思います。

元隊員が語る「トイレ」の重要性

 前に述べたように、訓練された兵士は航空機のトイレを極力使わないようにしているようですが、いざという時に安心して快適に使えるトイレの有無は、訓練された兵士にとっても大事なことでもあるようです。

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シンガポール空軍のA330-MRTT。2026年4月の時点で韓国、シンガポールなど9か国で運用されており、カナダなど3か国も導入を決定している(竹内 修撮影)

 シンガポール空軍は1980年代前半に、航空自衛隊も運用しているE-2C早期警戒機を導入し、イスラエルのIAIがガルフストリームのビジネスジェット機をベースに開発した早期警戒機「G550CAEW」との交代が完了する2010(平成22)年まで、陸上の基地から運用していました。

 このE-2CとG550AEWの両方でレーダーのオペレーターとして勤務していたシンガポール空軍の方に、筆者は2018(平成30)年のシンガポールエアショーにて話を聞く機会を得ました。そこで「E-2CとG550CAEWの一番の違いは何ですか?」と質問したところ、次のように回答しました。

「G550CAEWにはちゃんとしたトイレがあるから、いざという時、安心して用が足せる。君は笑うかもしれないけれど、長時間任務に就いていると、その違いは集中力にも影響してくるんだよ」

 搭載するレーダーなどの違いなどの話を期待していた筆者は、正直、少し面食らってしまったのを覚えています。しかし、ひとたび飛びたてば長時間、軍用機の機内で勤務するオペレーターやパイロットが受ける負担は、筆者が想像していたよりも大きく、その負担を軽減するための居住性の改善が大切なことだと思い知らされた気がしました。

 戦闘機のような機内容積の小さな軍用機では当然望むべくもないのですが、民間人が登場する可能性が高い空中給油・輸送機や輸送機はもちろんのこと、長時間滞空する早期警戒(管制)機なども、極力、乗員の居住性を考慮する必要があると筆者は思います。

【え…!】ここまで違うのか「輸送機のトイレ」比較(写真で見る)

Writer:

軍事ジャーナリスト。海外の防衛装備展示会やメーカーなどへの取材に基づいた記事を、軍事専門誌のほか一般誌でも執筆。著書は「最先端未来兵器完全ファイル」、「軍用ドローン年鑑」、「全161か国 これが世界の陸軍力だ!」など。

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