「0番線」は幻だった? 準備万端の綾瀬駅で5年間使われなかったワケ
東京メトロ千代田線の綾瀬駅には、全国的にも珍しい「0番線」が存在します。しかし、このホームは準備されていたにもかかわらず、開業から5年以上も使われない“幻のホーム”でした。その背景には、利便性とダイヤをめぐる複雑な事情がありました。
ついに「0番線」の使用を開始
1980年代に入ると千代田線の混雑は急激に激化します。朝ラッシュ時間帯の増発を検討しますが、常磐線各駅停車は増発が必要なほどではなかったので、朝にも綾瀬駅折り返し列車を設定して増発することになりました。
しかし、奥取りのままでは朝ラッシュ時間帯に4番線(本線)をふさいで乗客を全員降ろすことになるため、少しでも手間取れば後続列車への影響は免れません。また奥取りの分、運用が長くなるため必要な編成数も増加してしまいます。
そこで当初の想定に戻る形で「0番線」を新設し、1985(昭和60)年3月から区間列車はそちらで折り返すことにしました。乗り換えが遠く不便になったことに、北綾瀬ユーザーは大きな不満を抱いたことでしょう。
営団は北綾瀬支線の必要性は認めましたが、新駅開業による利用者増加見込みは大きくないと考え、設備は3両分にとどめました。ところが想定を超えて利用は増加し、北綾瀬駅の1日平均乗降人員は1979年度の約8000人から、開業5年で1万5000人、10年で2万人、25年で3万人を超えました。
これを受けて東京メトロは2014(平成26)年2月、ついに北綾瀬の10両対応と本線との直通運転を決定し、2019年に運行を開始しました。効果はすさまじく、2024年度の乗降人員は4.3万人を超えています。
2026年5月時点で、北綾瀬駅の平日朝ラッシュ上り(朝6~8時)は計25本中14本、日中も毎時3本が本線に直通しています。かつての中線折り返し列車は直通列車に進化し、0番線は3両編成の発着に特化する、北綾瀬支線は長い時間をかけて変化してきたのです。
Writer: 枝久保達也(鉄道ライター・都市交通史研究家)
1982年、埼玉県生まれ。東京地下鉄(東京メトロ)で広報、マーケティング・リサーチ業務などを担当し、2017年に退職。鉄道ジャーナリストとして執筆活動とメディア対応を行う傍ら、都市交通史研究家として首都圏を中心とした鉄道史を研究する。著書『戦時下の地下鉄 新橋駅幻のホームと帝都高速度交通営団』(2021年 青弓社)で第47回交通図書賞歴史部門受賞。Twitter:@semakixxx





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