なぜ日本に「消防飛行機」はないのか? 相次ぐ山林火災、ヘリでの対応は限界なのでは… 課題あるが再検討すべき理由

近年、岩手県で平成以降最大規模の山林火災が相次ぎ、自衛隊ヘリによる空中消火の限界も浮き彫りになっています。被害の甚大化を防ぐため、飛行艇など「消防用固定翼機」導入の可能性や課題について解説します。

最適な消防用固定翼機は?

 こうした制約から、日本では消防用固定翼機が使われてきませんでした。しかし、最近の山林火災を見ると、人家まで延焼する前に、まずは消防用固定翼機を投入し短時間で大量の散水によって火勢を弱めるべきと、筆者(小林春彦:月刊『軍事研究』記者)は考えます。

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消火キットを試験するスペイン空軍のA400M輸送機(画像:エアバス)

 では、どのような機種が最適なのかを考えると、CH-47の空中消火用バケットの約7.6tを上回る搭載量や、海や湖から一度に大量の水を取水できる特長から、まずは新明和工業が長年にわたり研究してきた消防飛行艇が候補として挙げられるでしょう。

 同社は、海上自衛隊のPS-1哨戒飛行艇1号機を改造し、貯水タンク、取水口と放水扉を取り付け、1976年と1978年に空中消火実験を実施した結果、開発可能という結論に達しました。その後継であるUS-2についても消防飛行艇として転用可能か社内研究を行っており、現在は約15tの水を搭載できると結論付けられています。加えて、ロシアのベリエフBe-200ESのようなターボファンエンジンの消防飛行艇と違い、US-2は約90km/hという極低速で飛行できるため、ヘリコプターに近い、かなりピンポイントな散水も可能です。

 ただし、消防飛行艇の実現にあたっては、改造開発費から運用・維持費、さらには消防庁か防衛省・自衛隊か、あるいは新たな組織が運用するのかといった諸問題が障害となり、今日に至っています。

 こうした課題を解消できるメドが立たない現状では、日本に消防専用機が定着するのは困難です。そこで次善の選択肢として、ロッキード・マーチンC-130やエアバスA400Mのように、機体の改造なしに空中消火システムを搭載可能なターボプロップ戦術輸送機を使い、必要に応じて空中消火活動に活用することが考えられます。

 4月から国会では、防災対策の司令塔機能を担う「防災庁」設置法案が審議されています。このタイミングを捉えて、被害が甚大化する傾向にある山林火災に備え、固定翼消防機の導入を再び検討しても良いのかもしれません。

【青くない!】これが「US-2消防飛行艇」です(写真で見る)

Writer:

月刊誌『軍事研究』編集部記者。編集作業の傍ら、運用者である防衛省・自衛隊および防衛装備品を作る国内外企業などの取材をもとに記事を(不定期に)執筆する。

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