操縦はヒヤヒヤ!? 万能の垂直離着陸機「ハリアー」と似て非なるF-35B 飛び方の違いとは?

2026年6月、アメリカ海兵隊での40年におよぶ役割を終えた垂直離着陸戦闘機ハリアー。実はパイロットには曲芸なみの緻密な操縦が要求されていました。

F-35Bに引き継がれたV/STOL機の魂

 アナログ制御の限界にあったAV-8Bの操縦環境は、後継機となるF-35B「ライトニングII」で劇的に改善されました。完全なデジタル制御のF-35Bでは、排気ノズルの角度調整はコンピュータが担当するため、パイロットは3本目のレバー操作から開放されました。

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強襲揚陸艦から発艦する海兵隊のF-35B。F-35Bは基本的に垂直離陸運用を想定されていないので、公式にはV/STOL機ではなく、STOVL(短距離離陸/垂直着陸)機と呼ばれる(画像:アメリカ海兵隊)

 さらに、速度低下にともなう不安定な機体挙動や、接地直前の風による傾き、エンジンの温度限界などもすべてコンピュータがミリ秒単位で管理します。パイロットは、水平飛行時と変わらぬ感覚で操縦桿を動かすだけで、安全にホバリング飛行を維持できるのです。

 戦後に登場したジェット戦闘機は、技術的進歩を重ねながら、現在は第5世代機が主流となりつつあります。このようなジェット戦闘機の進化の中で、「ハリアー」からF-35Bに繋がるV/STOL機は、かなり特殊な新技術が詰まった新しい戦闘機シリーズです。

 その歴史の中で、米海兵隊の過酷な要求に40年間も答え続けたAV-8B「ハリアーII」がなかったら、F-35B「ライトニングII」は生まれなかったでしょう。そういう意味で、「ハリアーII」はV/STOL生態系を現代につなげた、貴重な航空機でもあるのです。

【画像】長い歴史に幕を閉じるアメリカ海兵隊「ハリアー」戦闘機

Writer:

1973年生まれ、上智大学文学部史学科卒業、東京都立大学大学院人文科学研究科中退。 雑誌編集者、ゲーム会社ウォーゲーミングジャパン勤務等を経て、各種メディアにて歴史・軍事関連の執筆や翻訳、軍事関連コンテンツの企画、脚本などを手がける。Youtube「宮永忠将のミリタリー放談」公開中。

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