意外と低い戦車の稼働率、クルマのようにいかないワケ ドイツ電撃戦などの実態は…?(写真11枚)

戦車の運用は、実は故障との戦いでもあります。現在においても、国産車のようにほぼ壊れないよう作ることができないのには、もちろん理由があります。

稼働率100%は無理

 部隊が持っているどれだけの戦車がまともに走って撃てるかを表す「稼働率」という管理指標があります。エンジンキーをひねればすぐ動く普通のクルマは稼働率100%ということになります。

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レオパルド2の覆帯修理を行うポーランド陸軍戦車兵。50tもある戦車ゆえ簡単にレッカー移動というわけにもいかず、渋滞の要因に(画像:ポーランド国防省)。

 湾岸戦争でアメリカ軍戦車の稼働率は70%以上をキープしましたが、この数字さえ驚異的で、これこそ何も無い砂漠のまんなかに補給基地を作ってしまうようなアメリカの後方支援部隊による不眠不休の働きと物量の賜物です。アメリカ軍戦車部隊の指揮官は敵イラク軍の動きよりも、味方の後方支援部隊がどこまで付いてこられるかを気にして作戦を立てたといいます。フランス陸軍は予算の制約でパーツ供給が滞り、戦車の稼働率が約4割まで低下し問題になったこともあります。現代戦車はカタログデーターこそ高性能ですが、この高性能はつねに発揮されるという保証はありません。

 ひと口に戦車といっても、大砲や機関銃といった武器系、エンジンやトランスミッションといった機関系、射撃管制装置といった電子機器系、無線機といった電装系など様々なパーツの集合体です。各パーツの整備にはそれぞれ別の専門家が必要で、1台の戦車を完全にオーバーホールするには1か月以上掛かるといいます。また各専門家の連携が必要であり、専門家を育てることが稼働率を上げることになります。

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ポーランド軍によるレオパルド2戦車の覆帯修理。覆帯のセンターピンを交換しようとしているが、重い部品を狭い場所で扱う作業性はとても悪い(画像:ポーランド国防省)。
覆帯は大きな鉄の塊を連結したもので、ひとつでも重く、手作業での交換は大変。ほかの戦車の乗員も手伝いに駆けつける。(画像:ポーランド国防省)。
作業は乗員全員の協力が必要な重労働で悪態が聞こえてきそうである。まだ地面がぬかるんでいないだけ救われる(画像:ポーランド国防省)。

 そうした専門家を育てる機関として、たとえば陸上自衛隊には「武器学校」があります。各種装備品の整備員を養成する整備教育が実施されており、その一環として、最新装備が教育用に真っ先に配備され、陸上自衛隊が装備している戦車、装甲車、車両、大砲、ミサイル(誘導弾)、小銃に至るまで多彩な装備を教材として持っています。16式機動戦闘車、水陸両用車(AAV)といった最新装備の一方で、八九式中戦車といった旧日本陸軍の戦車や大砲などの古い装備も資料として保管しているのです。ほか武器学校においては、後方支援部隊などの指揮官、幕僚の養成や、不発弾処理などの教育が実施されています。

 ある日クルマで出かけようとすると、バッテリーが上がっていて焦るといったことは、クルマのオーナーなら誰しもに起こりえます。機械は故障するもので、それが何時やってくるのかは確率の問題です。稼働率100%の状態がほっといても続くということはありません。戦車のようにつねに整備点検を心がけたいものです。

【了】

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Writer:

1975(昭和50)年に創刊した、50年以上の実績を誇る老舗軍事雑誌(http://www.argo-ec.com/)。戦車雑誌として各種戦闘車両の写真・情報ストックを所有し様々な報道機関への提供も行っている。また陸にこだわらず陸海空のあらゆるミリタリー系の資料提供、監修も行っており、玩具やTVアニメ、ゲームなど幅広い分野で実績あり。

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