【帰省と「乗りもの」】クルマの「先進運転支援システム」巡る誤解 作動条件の確認不足が事故のもとにも

事故のもとになる「作動条件」確認不足

 衝突被害軽減ブレーキや、ペダル踏み間違い時加速抑制装置は、メーカーやシステムによって、作動する対象物(障害物)や条件も異なります。衝突被害軽減ブレーキで言えば、作動域が「全車速で」というクルマもあれば、「30km/h以下で走行時」と上限が定められているケースも。また、クルマと歩行者だけに反応して作動するシステムもあれば、自転車もOKというものもあります。

 ちなみに、ペダル踏み間違い時加速抑制装置に関しては、前方の壁に対してのみ作動するというシステムもあります。この場合、人やクルマに対しては作動しません。親や祖父母が発進時に子どもを轢いてしまう事故もしばしば発生していますが、そうした状況をどの先進運転支援システムでも防げるとは限らないわけです。

 先に挙げた消費生活センターへの衝突被害軽減ブレーキに関する相談も、その内容を吟味してみれば、多くがユーザーの誤解や理解不足が根底にあるように見えます。メーカーの説明が届いていないユーザーが、一定数、存在するのです。

 国民生活センターが2017年に実施した、先進運転支援システム搭載車を所有する2000人を対象としたアンケート調査では、2割弱の人が運転する際の注意事項について「聞いたことはあるが理解していない」もしくは「理解していない」と回答。また、先進運転支援システムにまつわる想定外の出来事(意図せず作動した、あるいは作動しなかった、など)を経験したことがあると回答した人も、約2割に上っています。

 また、自動車公正取引協議会が2018年1月から2月にかけて、会員の自動車ディーラーに実施したアンケートでは、担当者586人のうち約42%が「説明しても正しく理解してもらえない」と回答。そして「テレビCMの影響等でお客様が機能を過大評価している」という回答が、およそ60%もありました。

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テレビCMなどにおける「機能には限界がある」旨の表示は、2019年から大きくなる(下)。すでに放映中のものは、その前に修正の可能性あり(画像:自動車公正取引協議会)。

 2018年10月、先進運転支援システムへの過信や誤解を防ぐために、自動車メーカーや国、専門家などによる「先進安全自動車推進検討会」において、「自動運転車」という言葉をなるべく使わずに「運転支援」などを使うという方針が決まっています。

 現在のところ、「どのようなときにも、何に対しても」作動する運転支援システムは、市販車には存在しません。ですから、「うちのクルマには先進運転支援システムが搭載されているから大丈夫」と考えず、愛車の先進運転支援システムが作動する条件を確認し、覚えておきましょう。

【了】

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Writer: 鈴木ケンイチ(モータージャーナリスト)

日本自動車ジャーナリスト協会(AJAJ)会員。自動車専門誌やウェブ媒体にて新車レポートやエンジニア・インタビューなどを広く執筆。中国をはじめ、アジア各地のモーターショー取材を数多くこなしている。1966年生まれ。

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コメント

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1件のコメント

  1. 企業の好感度や税制絡みを主体とした売り文句の製品の性能なんて毎度こんなもん
    設計や不具合の炙り出し以前の問題で動機が不順すぎる
    固い物体や中を舞う風船のような柔らかい物体の認識、以前からの課題であったにも関わらずこの辺りで開発の分配を誤った感は否めませんね。
    これは長引きますよ。