「戦車の母国」イギリスになぜ「史上最悪の戦車」ができたのか 試行錯誤の証とは?

イギリスは「戦車の母国」というだけあり、目指したものは理解できても、なぜそうなってしまったのかという失敗作も多数。「大英帝国の暗黒面」とも称される、試行錯誤の歴史を紐解きます。

軍艦並みの大口径を搭載 火力偏重の極地、FV4005

 ここまでは、ともかく防御力最優先の戦車を見てきましたが、イギリスは攻撃力最強の戦車(正確には対戦車を想定した駆逐戦車)も開発しています。

 第2次世界大戦後、今度は米ソを筆頭とした東西冷戦の時代へと突入しました。イギリスはアメリカを盟主とする資本主義陣営(いわゆる西側)にいたので、イギリス軍戦車部隊の仮想敵はソ連戦車であり、そのなかでも最も強力なIS-3重戦車などを撃破できる駆逐戦車として、1950年代に開発されたのが「FV4005」でした。

 一見してわかるのが、その巨大な主砲です。なんと口径は183mmもあり、これは戦車砲(対戦車砲含む)としては最大口径のものです。

 ただし、そこまで大口径のために砲弾の人力装填が不可能で、そのため砲塔内部に補助装填装置が装備され、装填手も2名必要でした。

 しかも、あまりにも砲塔が大型化したため、重量を軽減するために砲塔の装甲厚はわずか14mmしかありませんでした。これは戦前の九五式軽戦車(日本)やII号戦車(ドイツ)の正面装甲に匹敵する薄さで、12.7mm重機関銃であれば貫通してしまうほどであり、戦車砲や装甲車の機関砲にも、もちろん耐えられません。しかも、砲塔の旋回は左右90度までに限定されました。

 車体は当時、イギリス陸軍の主力だった「センチュリオン」戦車を流用し、そこに防御力を犠牲にした大型砲塔を組み合わせたことで、重量は50tに抑え、最大速度は30km/hを確保していました。

 しかし、やはり極端すぎたため、1957(昭和32)年8月に開発は中止され、試作車1両のみで終わったのです。

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車体に対して砲塔が極端に大きなFV4005(月刊PANZER編集部撮影)。
FV4005は戦車砲としては史上最大口径の183mm砲を搭載する(月刊PANZER編集部撮影)。
FV4005の砲塔後部には砲弾装填用の大型ハッチが設けられている(月刊PANZER編集部撮影)。

 これまで挙げてきた失敗作たちは、イギリスの戦車開発の技術資料として、現在も同国にあるボービントン戦車博物館に保管・展示されています。当然、イギリスは常に失敗していたわけではなく、「クロムウェル」や「センチュリオン」、そして「チャレンジャー」といった名戦車も開発しています。

「失敗は成功の母」といいます。失敗から学べることは多い訳ですから、もしかするとこれら失敗戦車をあえて残すことで、イギリスは教訓そのものをいまに伝えているのかもしれません。

 イギリス旅行の際はボービントン博物館に行って、これら異形戦車を眺めてみるのも、人生にとってプラスになるかもしれませんよ。

【了】

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コメント

8件のコメント

  1. >>速度が自転車並で…

    まあ陸自も61式(だったか)開発時、普通科隊員の進出速度と同等の時速30km程度までで十分!!

    という主張をするえらい人もいたそうなので、火力と装甲が満たせれば…と考えたのかもしれません。

  2. イギリスの軍事開発はよく「変態」と称される。まー軍オタ限定の話だが。

    戦車だけじゃないので第2弾第3弾もやっとくれ。調べりゃいくらでも出てくるから。

    • ははあ。

      岡部ださく先生の著作ですな。

  3. イギリスを共和制にしたクロムウェルを戦車の名前にするってどうなの?

  4. そんなものはガラクタに過ぎん。現代の機械産業の制空権は安来の十神山にある。古事記を読めるようになりたまえ。そして特殊鋼の結晶の秘密を知ることだ。大同少尉には口を酸っぱくして言っているのだがね。なに、私と戦うつもりか。素晴らしい。見せてあげようラピュタの雷を。

  5. まだ大同の技術士が庄原の比婆山が古事記の比婆山と言い張っておる。伯耆と出雲の堺の比婆山は島根県安来市伯太町にある比婆山であることは分かり切ったこと。古事記を読めるようになりたまえ。

  6. 我が国、電気製鋼の発祥の地ですね。

  7. そうかマルテンサイトと関連が深いので刃物まつりやるんですね。

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