チョバムアーマーとは? 複合装甲とは? 機密のヴェールで覆われた「戦車装甲」の世界

最新の複合装甲は「チョバムアーマー」とはまったくの別モノ

 一方、複合装甲そのものはアメリカやイギリスだけでなく、当時ソ連などでも研究されており、実はソ連のほうが先に実用化していました。

 ソ連の複合装甲は、1968(昭和43)年より運用を始めたT-64A戦車において初めて採用されています。しかしソ連はこの最新鋭技術をひた隠しにしたため、世界で初めて報道発表した「チョバムアーマー」が、世界的に複合装甲の代名詞のように広まったというわけです。

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世界で初めて複合装甲を採用した量産戦車である旧ソ連のT-64。現在もウクライナなどで現役である(画像:アメリカ陸軍)。

 ただし、技術は日進月歩です。ごく初期の複合装甲である「チョバムアーマー」はすでに旧式化しており、2020年現在、英語でも複合装甲のことは「コンポジットアーマー」と呼ぶ方が一般的です。

 1990年代以降、主流なのが「拘束セラミック装甲」と呼ばれるものです。チタンなどで構成された角型ケースの中に、セラミック素材を高い圧力をかけて封入したもので、ブロック構造なのが特徴です。これを戦車の車体や砲塔など必要な部分に配置していく形を採ります。

 実際のところは、複合装甲については各国とも第一級の国家機密のため、構成素材および生産技術ともにほとんどの点で真相は不明ですが、「チョバムアーマー」を始めとした従来の複合装甲が各種素材の板からなるのと比べると、複合装甲とひと括りにしても実はまったく違う構造だといえるでしょう。

 なお2020年現在、この拘束セラミック装甲を量産できる技術を持っているのは、日本を含めて5か国ほどだといわれています。

【了】

【写真】火を噴く90式戦車 我が国初の複合装甲採用戦車

Writer: 柘植優介(乗りものライター)

子供のころから乗り物全般が好きで、車やバイクはもちろんのこと、鉄道や船、飛行機、はたまたロケットにいたるまですべてを愛す。とうぜんミリタリーも大好き。一時は自転車やランニングシューズにもはまっていた。

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