2階建ての東海道線215系 少ない活躍のワケ 快速アクティーからも消え その功績と教訓
「満員電車ゼロ」へのハードルは高く
快適通勤は多くの利用者が望むところであり、鉄道会社もそれを目指してさまざまな施策を導入しています。かつて東京都知事が「満員電車ゼロ」の公約を掲げたとき、2階建て電車のイメージパースが発表されました。
しかしこれを走らせるには、電力設備や橋梁、トンネルやホームなどすべてを造り直す必要があり、不可能とは言わないまでも莫大な投資が必要で現実的ではありません。
それでは215系は満員電車ゼロへの救世主になるかというと、乗降時間が伸びてしまう設計ではそれも難しいと言わざるを得ません。1本の列車がホームを長時間占有すると、後続の列車はホームに入れません。つまり停車時間が延びがちな215系では、走らせられる列車本数が減ってしまい、結果として輸送力が落ちてしまいます。
むしろこれまでの通勤輸送の改善には、乗降時間の短縮を重視し、一度に多くの乗客が乗り降りできる多扉車やドア幅の広いワイドドア車などを投入したり、列車本数を増やすために複々線化を推進したりしてきました。同時に着席需要に対しては、ライナーの運転で対応するのが現実的な解でした。
通勤輸送の抜本的改革は車両だけでは解決できず、インフラ全体の見直しからしなくてはならないのです。
【了】
Writer: 児山 計(鉄道ライター)
出版社勤務を経てフリーのライター、編集者に。教育・ゲーム・趣味などの執筆を経て、現在は鉄道・模型・玩具系の記事を中心に執筆。鉄道は車両のメカニズムと座席が興味の中心。座席に座る前に巻尺を当てて寸法をとるのが習慣。言うなれば「メカ&座席鉄」。
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