バスは鉄道の代わりになれるか 災害で増加&長期化「列車代行バス」 現場の奮闘
簡単ではない鉄道→バスへの転換
急な要請で代行バスを運行する際は、鉄道関係者がストップウォッチを片手にバスの運転席近くに座り、「この道路事情でこの時刻設定では遅れが出る」などの情報を運転手の方から細かくヒアリングする姿も見られます。たとえバス代行はつかの間でも、バスと鉄道の双方が協力しながらトライ&エラーを繰り返し、最適解を探りつつ運行されているのです。
大型車の運転手不足が叫ばれる現代では、代行バスが必要な時に車体や運転手が確保できない事態もよく起こります。2018年の豪雨により広島県の山陽本線や呉線が被災した際には、周辺地域のバスが圧倒的に不足し、全国の事業者が広島へ集結したのも記憶に新しいところです。もともとバス事業者が少ない地域では、代行バスをなかなか出せない事態もよく起こります。
その一方、地域密着のバス事業者のなかには、夏場のツアーなどの受注を断り、条件的に良くない代行バスをあえて引き受けるケースもあるそうです。ハイシーズンの収益より地域のピンチへ対応するバス事業者が、しっかり報われることを願ってやみません。
近年、災害などとは無関係に、鉄道からあえてバス路線に転換させるケースも出てきました。たとえば北海道では、2014(平成26)年に廃止となった江差線 木古内~江差間のバス転換に際し、これまでカバーできていなかった病院や学校、市街地などの経路を見直すことで実績を上げています。また石勝線夕張支線(新夕張~夕張)の廃止を地域交通体系の見直しと捉えた「攻めの廃線」のような事例も出ており、同様の動きが他地域に広まるかが注目されます。
鉄道からバスへの転換は選択肢として大いにあり得るものですが、利用者が伸び悩んでいた路線を丸々引き継いでも乗客増にはつながりません。コストだけでなく、「鉄道の形にこだわらないバス路線・沿線道路づくり」「バス事業者が安定して事業を続けられる協力体制」とともに、運転手の不足が叫ばれる中で「バスの運行に携わる方の生活基盤」についての議論も必要でしょう。その際、列車代行バスが走る(走った)地域の「実際にバスを走らせてみてどうだったか」という数々の事例は、使いやすい交通機関を作るための教訓となるのではないのでしょうか。
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Writer: 宮武和多哉(旅行・乗り物ライター)
香川県出身。鉄道・バス・駅弁など観察対象は多岐にわたり、レンタサイクルなどの二次交通や徒歩で街をまわって交通事情を探る。路線バスで日本縦断経験あり、通算1600系統に乗車、駅弁は2000食強を実食。ご当地料理を家庭に取り入れる「再現料理人」としてテレビ番組で国民的アイドルに料理を提供したことも。著書「全国“オンリーワン”路線バスの旅」など。
かなり昔、JTB等の時刻表には日高線、吾妻線の並行国鉄バスの時刻も斜字体で併せて掲載されていましたがあれはなんだったのでしょう。代行バスの必要が生じても既存路線バスがあればうまく使って頻度の高さが所要時間の長さをカバーすることもあり得ます。日田彦山線は県境ならば高校生の越境流動が少なくて不幸中のさいわいでしたね。
鉄道に比べてバスは廃止手続きが簡単だから、こうした代替バスもそのうち、少子化で通学利用がなくなるなどして、しれーっと廃止されていく。
地方の過疎はどんどん進む。