国内唯一「3種類の線路幅」をまたぐ珍踏切とは 1435/1067/762mm そもそもなぜ幅が違うの?
北勢線は国内数少ない現役ナローゲージ
三岐鉄道は北勢線と三岐線の2路線を有しますが、北勢線は2003(平成15)年に近畿日本鉄道から営業譲渡された路線です。ルーツをたどると、北勢線は沿線の旅客輸送、三岐線は藤原岳から産出される石灰石の輸送です。
20世紀初頭、政府は全国に物資輸送のネットワークを拡大させようとしていました。そのため、地方にも鉄道計画が次々と持ち上がります。しかし、人口が少ない村や産業がない町などに鉄道を建設しても採算がとれません。そこで、政府は「軽便鉄道」の建設を奨励しました。
軽便鉄道は軌間が762mmなので、買収する土地が少なく済みます。また、付帯する設備も走らせる列車もコンパクトになります。高スペック、高負担の鉄道はキャパオーバーになってしまうものの、軽便鉄道は鉄道が欲しいと考える地方から歓迎されたのです。北勢線は1914(大正3)年に部分開通しました。
こうして続々と軽便鉄道が建設されましたが、すでに日本の幹線鉄道の大半が狭軌で敷設されていたためナローゲージでは乗り入れができず、遠くへ物資を運ぶ際には貨車を積み替える手間が生じました。これらの手間が忌避され、特に戦後、ナローゲージの鉄道は次々と姿を消します。つまり北勢線は、数少ない「762mm軌間」の生き残りなのです。
【了】
※一部修正しました(4月14日11時48分)。
Writer: 小川裕夫(フリーランスライター・カメラマン)
フリーランスライター・カメラマン。1977年、静岡市生まれ。行政誌編集者を経てフリーに。官邸で実施される首相会見には、唯一のフリーランスカメラマンとしても参加。著書『踏切天国』(秀和システム)、『渋沢栄一と鉄道』(天夢人)、『東京王』(ぶんか社)、『私鉄特急の謎』(イースト新書Q)など。
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