「ズレてもホームドア開けます」京王線の車内に刃物男の“事件”再現訓練 課題も浮上

男はさらに放火も

 緊急事態発生の旨、そして飛田給駅への停車はすぐさま運輸指令など関係部署へ共有されました。

 怒声はなおも聞こえます。その時、車両の連結部付近で炎が上がるのが見えました。男が放火したようです。ちょうどそのころ、7号車へ逃げ出した乗客が事件発生を車掌へ連絡。ここで「男が凶器を持って暴れていること」「負傷者がいること」「放火されたこと」といった詳細が伝わります。事態を把握した車掌は運輸指令へ連絡し、運輸指令は警察、消防へ通報しました。

 ほどなくして列車は、飛田給駅に緊急停車しました。パニック状態の乗客たちが一斉にドア前に固まります。窓の外にはホームドアが見えますが、緊急停車のため、列車のドアとホームドアの開口位置があっていません。なお緊急停車に際し、車掌は以下の放送を繰り返していました。

「ドアコックは絶対に操作しないでください。列車が動けなくなります」

 果たして逃げられるのだろうか――しかし心配をよそに、列車のドア、ホームドアはすぐに開きました。車掌が緊急ドアスイッチを操作したのです。乗客はホームドアと車両のわずかな隙間を伝い、駅ホームへ避難します。すると乗客と入れ替わるように駅員が車内に乗り込みました。さすまたを手に、男を静止しようとします。

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男は突然、凶器で前に立っていた男性を刺し、さらに左隣にいた男性の腕を切りつけた(2022年4月21日、大藤碩哉撮影)。

 男は怒声を上げながら駅員と対峙します。しばらくにらみ合っているあいだに警察官が到着。事件発生の車両へ突入しました。うずくまった男性2人と男を引き離すようにし、警察官は盾で男をドアの方へ追いやります。

「刃物を捨てろ!」

 警察官は繰り返し叫びます。しかし男は従わず、大声を上げながら駅ホームに出ました。

 ホーム上にはすでに大勢の警察官がおり、それぞれさすまたと盾を持って男を取り囲みます。男の抵抗もむなしく、あえなく御用になると、消防隊と救急隊が到着。負傷者救護を第一に、車両へ入ります。

 腕を切りつけられた男性は自力で歩行できる状態であり、ホーム上で応急救護を受けました。一方、初めに負傷した男性は立つことすらできず、救急隊は担架を要請します。同じころ消防隊は、放火現場で初期消火を完了。さらなる延焼がないことを確認し、燃焼物の撤去にかかります。

【写真で見る】響く怒声 暴れる刃物男 「車内暴漢対処訓練」の様子

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コメント

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4件のコメント

  1. 素晴らしいの一言につきます。
    最大の問題である「車掌が把握できない状況では避難に時間を要する」という点の対処ができるようになりました。
    車内放送で車掌が異常事態を検出していることがわかれば、乗客もドアコック操作などで自力救済を試みなくなり、ひいては全体の避難が円滑になります。
    事件自体は暴漢によるものでしたが、車両火災を検出する方法が無い中で、乗客からの聞き取りができない場合の対応が定められていなかったことが問題の本質であったと思います。

    暴漢対応だけに留まらずきちんと問題点を深掘りする安全文化が京王にも警視庁にも根付いているのだと思います。

  2. 日本一安全な鉄道を目指す必要は無いと思う。私の主観だが、他路線は存じ上げないが、京王は性善説で成り立っていると感じている。その前提であらば、ホームドア設置は推進して欲しいけど、犯罪対策というか人災対策は鉄道会社がやらねばならぬとは思えないし、その責を負わねばならないとも思えない。

  3. 記事の本筋からそれましてすいません。
    駅名「多摩霊園」は正しくは「多磨霊園」です。麻の下の字は手では無く石です。
    駅名となっている都立多磨霊園は、当時の北多摩郡多磨村に開設された公園墓地、ということです。

    • ご指摘ありがとうございます。
      修正いたしました。