運転士と車掌「同時にやると休む間ない」 東京圏で進む鉄道のワンマン運転 実際どうなの?

実際、1人でも2人でもほとんど変わらない

 ただしATOとホームドアはワンマン化の前提ですが、実際にワンマン化に踏み切るにはこれに加えて経営判断が必要です。鉄道事業者にとって将来の働き手不足は大きな懸念でした。そこで今のうちから人手がかからない仕組みを作り、退職者と新規採用のバランスを取りながら、徐々に要員を削減していこうと考えていました。

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南北線にはフルスクリーン型のホームドアが設置されている(2021年12月、大藤碩哉撮影)。

 ワンマン運転とは結局のところ車掌の廃止です。彼らの仕事を奪うのはモチベーションに関りますし、組合問題にもなりますから、事業者としては穏便に進めていきたいと思っていたはずです。ところがコロナが事態を大きく変えてしまいました。せっかく設備があるのならできる限り早くワンマン化を実現して、業務の合理化・省力化を進めなければなりません。

 それにしても、最大で2000人が乗車する通勤列車を運転士1人に任せていいものかと不安に思う人もいるのではないでしょうか。前述のようにワンマン列車には運転士をバックアップする様々なシステムがあるとはいえ、機械が代替できない人間の直接対応、具体的には大地震などの災害や事故、事件時の対応という問題があります。

 これについては、鉄道事業者は口を濁しますが、結局のところ運転士と車掌の2人がいても対応は困難なのです。都心の駅間が短い路線では次駅で対応するのが一番早く、そのためには駅員の協力が不可欠です。

 災害時についても、2000人もの乗客を1人で誘導しようが2人で誘導しようが無理なものは無理です。この場合も駅の応援を待って避難することになりますし、同時多発的に被害が発生し、応援の見込みがない場合は乗客の協力を得て対処するしかありません。

 ワンマン運転はATOやホームドアを含めたシステム全体で安全性を確保する設計ですが、その中には指令所や駅といった外部のサポートも含まれていること、そしてそれは、ワンマンでもツーマンでも変わらず重要であることを見逃してはなりません。

【了】

【写真】有楽町線の新型車両のハンドル

Writer: 枝久保達也(鉄道ライター・都市交通史研究家)

1982年、埼玉県生まれ。東京地下鉄(東京メトロ)で広報、マーケティング・リサーチ業務などを担当し、2017年に退職。鉄道ジャーナリストとして執筆活動とメディア対応を行う傍ら、都市交通史研究家として首都圏を中心とした鉄道史を研究する。著書『戦時下の地下鉄 新橋駅幻のホームと帝都高速度交通営団』(2021年 青弓社)で第47回交通図書賞歴史部門受賞。Twitter:@semakixxx

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コメント

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1件のコメント

  1. 二人いれば一人は乗客対応、もう一人が本部との連絡対応が可能。最悪、テロでも一人だと殺されたらジ・エンド😉