東武を前に歯が立たず…でもない? 「日光戦争」国鉄・JRはどう奮闘したか 一時は優勢?
およそ四半世紀ぶりに復活した特急「日光」
しかし、東武1720系は普通車ながら先述の通り国鉄グリーン車並みのリクライニングシートを備え、ビュッフェやサロンもあるなど、段違いの設備で国鉄を脅かしていきます。157系を使用した国鉄急行「日光」は1969(昭和44)年、車両を一般急行形である165系に変更。その「日光」も1982(昭和57)年に廃止されました。
しかし、分割民営化後の1988(昭和63)年、JRは土休日を中心に、池袋~日光間で快速「日光」の運行を開始。1992(平成4)年からは185系電車を使用した特急「日光」に発展させ、当時最も豪華な昼行特急車両だった251系電車による特急「ビュー日光」も臨時で運行します。
他方、東武鉄道は1990(平成2)年より、個室やビュッフェを備えた豪華車両100系「スペーシア」を投入して、質的優勢を保ちました。
こうしたこともありJR特急は利用が振るわず、1997(平成9)年に運行中止。近郊形115系電車の「ホリデー快速日光」を、上野~日光間で運転するに留まります。
テコ入れされたのは2003(平成15)年のこと。JRは特急形183・189系電車による快速「やすらぎの日光」を新宿~日光間で運行開始します。この列車は平塚駅や千葉駅にも拡充され、JRの広域ネットワーク力を示しました。
このように、長年ライバル関係だった東武鉄道とJR(国鉄)でしたが、2006(平成18)年より栗橋駅に設置した連絡線を介して相互直通運転を開始。特急「日光」が復活し、ここに「日光戦争」は終結します。東武鉄道の100系電車が「スペーシアきぬがわ」として、ライバルだったJR新宿駅に乗り入れたことは当時話題となりました。
特急「日光」は当初、485系電車や189系で運行されていましたが、2011(平成23)年より253系電車1000番台を投入してサービスアップを図ります。
なおJR日光線には2018年、観光列車「いろは」が投入されますが、2022年に運行終了。同線は臨時列車以外、ロングシートのE131系電車のみが走る路線となりました。
翌2023年には東武鉄道の新型「スペーシアX」の運行開始が予定されており、共存路線となった日光への旅路は、ますます魅力的になりそうです。
【了】
Writer: 安藤昌季(乗りものライター)
ゲーム雑誌でゲームデザインをした経験を活かして、鉄道会社のキャラクター企画に携わるうちに、乗りものや歴史、ミリタリーの記事も書くようになった乗りものライター。著書『日本全国2万3997.8キロ イラストルポ乗り歩き』など、イラスト多めで、一般人にもわかりやすい乗りもの本が持ち味。
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