渋谷~代官山に「廃駅」があった!? 東急東横線の地下化10年 地上時代の記録

生まれ変わった渋谷 でも随所に地上時代の残り香が

 工事が始まる前は、昭和初期に建設された重厚なRC造コンクリート柱が等間隔に並び、ときには銭湯や家庭菜園など、渋谷らしからぬ長閑な情景も楽しめました。一区間ながらじっくり巡ると変化に富んだ場所であったのは、今となっては思い出です。

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2本のレールが埋め込まれている「渋谷ストリーム」の通路(2018年9月、草町義和撮影)。

 翻って2023年現在、ポニーワーレントラス橋は撤去されましたが、高架橋は完全に撤去されたわけではありません。国道246号を渡っていた4面4線ホームの桁は橋脚と共に残存し、商業施設「渋谷ストリーム」と「渋谷スクランブルスクエア」を結ぶデッキとして活用。あのカマボコ屋根も再現され、床面にはレールを新たに埋め込み、地上駅時代を再現しています。

 高架橋の跡地は遊歩道となり、ところどころに支柱の一部を残し、柱番号が表記されています。また並木橋駅があった場所もホームを模した休憩スペースとなり、随所に鉄道のあった残り香を散りばめる演出がなされています。

「あれから10年」というのは、節目としてよくいわれますが、忙しない日々を送っているとあっという間に過ぎてしまいます。私(吉永陽一:写真作家)には渋谷~代官山間が幼少期より大変身近であったため、こうして記録に勤しみました。いまこの瞬間でも全国あちこちで激変していく姿があります。10年後にこんな姿であったのかと思い返す楽しみと驚き、そして改めて「いま」を記録していく大切さを感じていただけたら幸いです。

【了】

【写真】分かるぞ! 廃駅「並木橋」の痕跡を上から

テーマ特集「【特集】消えていく面影、今も走れる…鉄道の「廃線」どこにある?」へ

Writer: 吉永陽一(写真作家)

1977年、東京都生まれ。大阪芸術大学写真学科卒業後、建築模型製作会社スタッフを経て空撮会社へ。フリーランスとして空撮のキャリアを積む。10数年前から長年の憧れであった鉄道空撮に取り組み、2011年の初個展「空鉄(そらてつ)」を皮切りに、個展や書籍などで数々の空撮鉄道写真を発表。「空鉄」で注目を集め、鉄道空撮はライフワークとしている。空撮はもとより旅や鉄道などの紀行取材も行い、陸空で活躍。

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コメント

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1件のコメント

  1. 飾っておきたいような素敵な写真と懐かしシーンの数々
    ありがとうございました