初飛行の「ロシア製大型旅客機」、なぜ“時代遅れ”の4発機に? 背景に見えるロシアの誇示と焦り

ロシアのイリューシンが旅客機「Il-96-400M」の初飛行に成功しました。しかしこの機体、主流の今日では珍しく、エンジンを4基搭載しています。なぜこのような設計になったのでしょうか。

「双発化」よりも初飛行を優先させた背景

 ロシアでは、大型旅客機でも双発で済ませることができる大出力のターボファンエンジンを国内で実用化できていないうえ、ウクライナ侵略により西側から購入できる可能性もなくなりました。

 先代のIl-96-400Mの最大離陸重量は270トンとされ、西側の旅客機では787-10(242トン)を少し上回る程度です。ただし、787-10が使うロールス・ロイスのエンジン「トレント1000」の推力は1発あたり3万3000kgなのに対し、PS-90A1は約半分の1万7400kgであるため、4発のままで近代化をせざるを得なかったことが分かります。

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ボーイング787-10。キャパシティは似ているが、エンジンは大推力のものを2発設置した構成だ(乗りものニュース編集部撮影)。

 エンジン数が増えれば、整備にかける時間も費用もかかります。結局、Il-96-400Mは新型機として性能を向上させても、経済性も含めた限界はあると思われます。それでもロシアは、なぜこの時期に初飛行をさせたのでしょう。

 ロシア国内ではウクライナ侵略後ほどなくして、国内航空会社が使う西側製の旅客機の多くが補用部品の枯渇などにより、これまでのように完璧な状態では飛行できなくなりました。

このため、国際線国内線を問わず、路線の維持は国産機の使用にかかっていると言えます。それはUACがIl-96-400Mをデビューさせることにより、「リージョナル機のSSJ100、中距離狭胴機Tu-214、中距離機MS-21とともに外国機に代わるさまざまなサイズの航空機を提供できる」としていることからも分かります。

 もう一つは、「ロシアは屈しない」という西側諸国へのメッセージでしょう。Il-96-400Mは当初2021年の初飛行が予定され、2020年初めに最終組み立てラインへ移されていました。初飛行自体は約2年遅れでしたが、ロシア製機器を搭載し飛ばしたことで、ロシアは旅客機の開発力を失っていないと誇示したのかもしれません。

 しかしIl-96-400M は経済性に難がある4発機であるゆえに、ボーイングやエアバスのライバルになることはないでしょう。ただし、ウクライナ侵略へ目を移すと、戦争の先行きをまだ見通すことはできないのかもしれません。

【了】

【写真】フォルムはソソる…! これが「Il-96-400M」の全貌です

Writer:

飛行機好きが高じて、旅客機・自衛隊機の別を問わず寄稿を続ける。

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