「尖ったパイロットはいらない」F-35飛行隊長に聞いた 戦闘機部隊のリーダーに求められる「2つの要素」とは

重要なのは「協調性」パイロットとして理想系は?

 入田2佐は、約2年にわたって第304飛行隊で任務についた後、今度は東京・市ヶ谷にある防衛省の航空幕僚監部で勤務しています。そして、いよいよ航空自衛隊の最新鋭機であるF-35の飛行隊の隊長となりました。

「正直に言えば、自分も航空自衛隊の戦闘機パイロットである以上、F-35という機体を操縦したいという願望は常にありました。ただ、日頃より自ら周囲に対して『F-35の飛行隊長になりたいです』とアピールしていたわけではないですよ(笑)。まあ、真面目に今の(F-35の)飛行隊長というポストに就けた理由を挙げるとすれば、どんな任務や勤務地であっても『常に目の前のことを一生懸命やった』結果だと思います。これまでのパイロットや幕僚といった航空自衛官としての全経験が、今の職務に役立っていますからね」

 どうやって戦闘機飛行隊の隊長になれるのか。その直接の答えにはならないかもしれませんが、入田2佐のこれまでの航空自衛官としてのキャリアが大いに参考になるといえるでしょう。そこで求められたのは、パイロットとしての技量だけでなく、同じ飛行隊の隊員との協調性や統率力だったといえそうです。

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航空祭で激しい機動飛行を行うF-35A。F-35Aはその機動性が劣るというイメージがあるが、そのG制限は9Gまでの及び、他の戦闘機に劣らない機動性を持っている(布留川 司撮影)。

 最後に入田2佐は映画『トップガン マーヴェリック』を例に出して、パイロットのひとつの理想形を語ってくれました。

「映画『トップガンマーヴェリック』では、任務で集められたパイロットたちが、お互いに自分の腕を誇示するというストーリーであったため、尖った性格のパイロットが多かったように思えます。しかし、現実の戦闘機部隊は、協力してチームで戦うことが極めて重要であり、あのような尖ったパイロットよりも、チーム全体を引っ張って戦うリーダーシップを持つ人間のほうが求められると思います。ですから、強いチームを作るのであれば、私が最初に見た初代作の『若くて尖った頃のマーヴェリック』よりも、新しい作品の『年老いた分別のあるマーヴェリック』と飛ぶ方が理にかなっているのではないでしょうか」

 現代戦は、総合力での戦いです。「戦闘に勝って戦争に負ける」ということにならないためには、チームとしての戦い方を極める必要があり、そのための能力が飛行隊長を含むリーダーには要求されるといえそうです。

【了】

【お腹パッカーン!】これが空自F-35Aのミサイル収納部分です(写真)

Writer: 布留川 司(ルポライター・カメラマン)

雑誌編集者を経て現在はフリーのライター・カメラマンとして活躍。最近のおもな活動は国内外の軍事関係で、海外軍事系イベントや国内の自衛隊を精力的に取材。雑誌への記事寄稿やDVDでドキュメンタリー映像作品を発表している。 公式:https://twitter.com/wolfwork_info

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