ロシアなぜ恐れる? 米「トマホークミサイル」ウクライナ供与の重たい“意味” よく飛ぶミサイルはすでにあるのに

アメリカのトランプ大統領がウクライナへのトマホークの供与を示唆しました。しかし、ウクライナはすでにロシアを射程に収めるミサイルを運用しています。トマホーク供与の重要性は、兵器の性能ではないようです。

トマホーク運用に不可欠な「アメリカとの協力」

 ただ、ウクライナへのトマホークの供与が実現すれば、国際政治の意味合いでの「ゲームチェンジャー」にはなり得るとも思います。

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オランダのフリゲート「デ・ロイテル」で行われたトマホークの発射試験(画像:オランダ国防省)。

 たとえば、海上自衛隊の斎藤 聡海上幕僚長は2025年9月30日に行われた記者会見で、「(トマホークの)運用に係る意思決定はあくまでも自衛隊が行う」と述べています。

 運用の意思決定を導入国が行うのは当然の話です。ブロック4仕様以降のトマホークは搭載艦艇において飛行計画の立案が可能となっていますので、これは斎藤海上幕僚長の言う通りなのですが、他方で攻撃情報の選定にはアメリカ海軍の大西洋/太平洋両艦隊に所属する、戦域任務計画センターからの情報提供を受ける必要があります。

 つまり、ウクライナとアメリカの関係性が大きく変わるというわけです。斎藤海上幕僚長も記者会見で、「(トマホークの)能力を最大限発揮するため、アメリカ海軍との協力が不可欠」とも述べています。

アメリカの「トマホーク工場」で協調されたコト

 筆者は2018年9月に、トマホークの開発と生産を行っているレイセオン・ミサイルシステムズ(現レイセオン・ミサイルズ&ディフェンス)の取材のため、同社が拠点を置くアリゾナ州ツーソンを訪れたことがあります。

 この2018年の時点で、日本がトマホークを入手することを考えておられた方は、そう多くなかったのではないかと思います。かく言う筆者もその一人で、ツーソンでアメリカとレイセオン・ミサイルシステムズが日本にトマホークを売却する考えがあるという話を聞かされて、正直な話面食らったと言うのが、当時の偽らざる気持ちでした。

 2025年現在はオランダとオーストラリアもトマホークを保有していますが、この時点では、アメリカの最も重要な同盟国である、イギリスにしか売却されていませんでした。

 この時レイセオン・ミサイルシステムズの担当者は「イギリスだけにトマホークの輸出が認められている」という点を何度も強調していました。担当者はそれ以上踏み込んだことは言いませんでしたが、「イギリスだけ」を強調していたあたりに、アメリカ政府が日本を、イギリスと同程度に、攻撃目標情報を提供しても構わない同盟国と見なしていることを伝えたかったのだろうと感じました。

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コメント

1件のコメント

  1. 『アメリカの「トマホーク工場」で協調されたコト』と記された小見出しの『協調』は、『強調』が正しいと思うのですが、いかがですか。これまでの幾度か指摘しましたが、御社の校正にはミスが多すぎ、記事の正確性に疑問が持たれます。2025年10月15日午前9時31分投稿