米軍が諦めた「未来の兵器」なぜ日本は形にできたのか? マッハ7で100km先の目標も撃破する「ゲームチェンジャー」開発の現在地

2025年、日本の兵器、装備品開発で明るいニュースと言えば、レールガンの洋上試験成功があげられます。とは言っても世界各国、特にアメリカの長い取り組みがあっても、まだまだ完成へのハードルが高い兵器です。そんなレールガンの開発状況を、改めて整理してみましょう。

アメリカはレールガン開発を凍結中

 では、なぜレールガンは海軍兵器の「ゲームチェンジャー」となることが期待されているのでしょうか。その理由は、主に「弾薬の安全性」「コスト/搭載数」「長射程/高初速」の3つが挙げられます。

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ズムウォルト級の3番艦「リンドン・B・ジョンソン」(画像:ゼネラル・ダイナミクス)。

・弾薬の安全性

 従来の艦砲やミサイルは可燃性の炸薬を大量に使用します。しかしレールガンは基本的に爆薬を使わない金属製弾体なので、艦が被弾した時の二次爆発のリスクが低く、安全性が向上します。

・コスト/搭載数

 レールガンは、艦載ミサイルの百分の一程度の発射コストを目指しています。結果、対艦ミサイルやドローンの飽和攻撃を低コストで迎撃できるようになります。

・長射程/高初速

 マッハ6を超える速度の弾体を使えば、迎撃までの弾着時間を短くできるので、弾道ミサイルや極超音速兵器の迎撃能力が期待されます。

 これほどの可能性を秘めた兵器ですが、意外にも、早くから研究に着手していたアメリカは手こずっていました。かつてはズムヴォルト級ミサイル駆逐艦の目玉兵器になるというロードマップも示されていましたが、2020年代に入って間もなく、レールガンの開発計画が凍結されてしまいます。

 開発を主導したアメリカ海軍は、このプロジェクト見直しの理由に、発射に必要な電力の蓄積と安定供給が難しいこと。また砲身の摩耗が早すぎるという問題を挙げていました。こうしたことから、艦上で繰り返し使用する兵器に仕立てるのが、現状では困難と評価したのです。

 ただし、レールガンの利点は明らかなので、研究過程で認められた電磁加速機や、高速投射弾の制御の応用研究は続けている模様です。

 ひるがえって日本はというと、冒頭に記した各種試験についても、実はかつてアメリカが諦めた段階まで、ようやくたどり着いたというのが実態です。大事なのは、ここから地道に、かつ集中的にレールガンの実用化研究を続けて、ノウハウを蓄積しておくことでしょう。

 ここで先へ行くことができれば、アメリカを引き離し実用化へと着実に近づくことができます。日本を取り巻く安全保障環境は、厳しさを増すことはあっても、脅威が減ることはほぼないでしょう。

 レールガンの完成度を増すことができれば、それは日本の防衛にとって強力な「切り札」になりうることは間違いないと、筆者(宮永忠将(戦史研究家:軍事系Youtuber))は考えます。

【写真】これが未来の大砲「レールガン」射撃の瞬間です 標的船の外観も

Writer:

1973年生まれ、上智大学文学部史学科卒業、東京都立大学大学院人文科学研究科中退。 雑誌編集者、ゲーム会社ウォーゲーミングジャパン勤務等を経て、各種メディアにて歴史・軍事関連の執筆や翻訳、軍事関連コンテンツの企画、脚本などを手がける。Youtube「宮永忠将のミリタリー放談」公開中。

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