ホルムズ海峡「逆封鎖」は合法? むしろ誤報!? アメリカとイランの行為の大きな“違い” カギは国際法にあり
アメリカ中央軍がイランに対する「封鎖」を発表しました。一部で「ホルムズ海峡の封鎖」あるいは「逆封鎖」などと報じられていますが、誤報ともいえます。国際法における「封鎖」とは何か、今回の措置がなぜそう呼ばれないのかを解説します。
「ホルムズ海峡封鎖」は誤り! その理由とは
それでは、冒頭で今回の措置を「ホルムズ海峡封鎖」と表現するのは誤りだと言いましたが、それはなぜでしょうか。
まず、「ホルムズ海峡封鎖」という表現は、おそらくイランがこれまで実施してきた、ホルムズ海峡における船舶の通航妨害とアメリカによる措置とを同じものと捉えているために用いられていると考えられます。しかし、そもそもイランによるホルムズ海峡での通航妨害は、前述の国際法上の封鎖の定義に当てはまらない、いわば「通峡阻止」とでもいうべき措置で、民間船舶を無差別に攻撃するなど、国際法上は合法とは言い難い行為です。
一方で、今回アメリカが発表した措置の内容を見てみると、まず措置の目的はイランの海上交通の遮断で、措置の対象となるのはイランの港湾や沿岸部に出入りするすべての船籍の船舶とされています。さらに、ホルムズ海峡における航行の自由は確保されるとも説明されており、さらなる詳細な情報は今後封鎖が実行される前に公式発表される、としています。
このように、アメリカの措置は、先述した国際的武力紛争(今回はアメリカとイラン)における封鎖の定義に当てはまるもので、しかもホルムズ海峡においてはイランに向かう、もしくはイランを出港した船舶以外には措置を実施せず、航行の自由を確保するとしています。とすると、この措置は「ホルムズ海峡封鎖」ではなく、「対イラン封鎖」と呼称するのが正確でしょう。
ところで、こうしたアメリカによる措置について、「アメリカは違法にイランを攻撃したのだから、これも国際法上違法ではないのか」といった意見がおそらく噴出するかもしれません。たしかに、2月28日に開始されたイランに対する軍事攻撃は、その国際法上の根拠を見出しがたく、合法な武力行使とは言い難いと筆者(稲葉義泰:軍事ライター)も思います。
しかし、発端となった軍事攻撃が違法であるとしても、そこから開始された武力紛争で適用される法である武力紛争法は、攻撃国か被害国かを問わず、当事国全てに平等に適用されます。そのため、アメリカによる封鎖措置は、海上における武力紛争に際して適用される海戦法規に従ったものである限り、合法な措置となります。
このように、とくにロシアによるウクライナ侵略を契機として注目を集めるようになった国際法は単純なものではなく、当事国がどの国か、ということにとらわれず、発生した現象を整理して分析する物差しのような存在です。したがって、ある出来事に関する国際法上の評価は冷静に行われるべきと、筆者は思います。
Writer: 稲葉義泰(軍事ライター)
軍事ライター。現代兵器動向のほか、軍事・安全保障に関連する国内法・国際法研究も行う。修士号(国際法)を取得し、現在は博士課程に在籍中。小学生の頃は「鉄道好き」、特に「ブルートレイン好き」であったが、その後兵器の魅力にひかれて現在にいたる。著書に『ここまでできる自衛隊 国際法・憲法・自衛隊法ではこうなっている』(秀和システム)など。





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